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IMF サーベイ・マガジン : 市場流動性は減ってはいないが、消滅しやすい危険

2015年9月29日

  • 低金利は市場の流動性を下支えしてきた
  • 市場構造の変化が、ショックが起こった際に流動性を消滅させやすくしている
  • 政策担当者はリスクを注視し、金融政策の正常化に備える必要がある

融市場における流動性のレベル、つまりある金融資産を短時間に低コストで大量に売買する力は、大半の資産クラスで著しい落ち込みは見られない。しかし、国際通貨基金(IMF)の新たな調査によると、低金利は市場の基本的な耐性が損なわれていることを隠している可能性がある。

(写真:Toby Melville/Reuters)

ロンドン株式市場株価の電光掲示板前を歩く通行人。 流動性の急激な落ち込みは金融安定への脅威にも。 (写真:Toby Melville/Reuters)

国際金融安定性報告書

新たな国際金融安定性報告書は、社債市場に焦点を当てながら市場流動性の水準や耐性を決定する要因を探った。このところは何年にもわたり、投資家はより高い利回りを求めてより高いリスクを取る用意があった。そして低金利や量的緩和として知られる債券購入などの金融緩和策が市場の流動性を維持していた。しかし、投資家集団の多様性の減少や発行額の小さい債券の増加、銀行の債券取引の縮小などの構造変化は、いったん金利が上がれば、流動性が多分減少することを示唆している。IMFの調査では、先進国でのより正常な金融政策へ円滑に戻ることが、急激で混乱を伴う市場流動性の変化を避けるのに不可欠としている。 

市場の流動性が欠如すると、資産価格はより変動しやすくなり、経済の動向との整合性が欠けるようになり、その資産の本来の価値についての情報がわかりづらくなる。また、流動性が乏しくなると、貯蓄者と借り手の間の資金移転も効率的でなくなる。投資家は投資を先送りしかねず、経済成長が阻害される。極端な状況では、流動性の急落は金融安定性を損ないかねない。世界金融危機時にみられたように、例えば債券やレポ取引などの複数の資産市場が凍結することもあり得るからだ。

市場流動性とは

市場流動性は、とりわけ投資家のリスク選好全体と金融仲介機関が直面する資金調達の制約に左右される(図1)。マーケットメーカー、つまり金融資産を売買する準備のある銀行や金融仲介機関のリスク選好は、こうした機関の取引の意欲に影響する。銀行のビジネスモデルの変化もまた、銀行がマーケットメークする意欲と能力に影響する可能性もある。マーケットメーカーの行動にかかわりなく、市場でのサーチコストや投資家の性向も市場流動性に変化を及ぼす。例えば、電子取引プラットフォームの出現は好ましい出来事だった。金融資産の買い手側と売り手側双方が相手を見つけるのを多分簡単に、かつ安価にしてくれたからだ。それと同様に、社債市場の透明性向上も流動性を向上させた。中央銀行による大規模な資産購入は、一般的には市場流動性に好影響を与えたものの、特定の債券の購入の容易さを減じることになった。

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市場流動性の裏側にあるものとその強靭性

IMFの国際金融安定性分析課のチーフ、ギャストン・ゲロス氏は「近年、投資家のリスク選好の高まりと低金利が市場流動性の基底的脆弱性の高まりを隠している」と指摘する。

2010年以来、そうした要因が米国の投資適格社債の推移の80%近くを説明している。構造変化もまた、市場流動性の水準に影響している。例えば、銀行のリスクを取る意欲の低下が一定の役割を演じている。しかし、そうした展開の裏側にある銀行に対する新たな規制の役割を適切に評価するための十分な時間が、規制導入以来まだ経っていない。IMFの調べでは、各国がそうした新規則の一部をようやく施行し始めたばかりだからだ。

もし金融環境が悪化したり、投資家がある特定のクラスの資産や金融市場に警戒的になったりすれば、市場流動性は急速に消滅する可能性がある。さらに、ある特定の資産クラスでの市場流動性の変動が他の資産クラスへ伝播する頻度が増え、高利回りや新興市場国の債券は、市場流動性の低下の兆候が見られる。資産クラス間の伝播が高まるにつれ、ある一つの市場での流動性ショックが他の市場へ広がる可能性が高まり、2008年の時のような世界金融システムへのショックにつながる可能性がある。

ゲロス氏は「流動性の頑健性を向上させる市場インフラの改革を続けていくことが不可欠で、その改革とは電子取引プラットフォームへのアクセスの公平化を保証したり、商品の標準化を進めたりすることだ」と話す。また、「それと同時に中央銀行と金融監督者は流動性消滅という事態に備える必要がある」と指摘する。

金融監督者と中央銀行は、市場流動性の消滅によって引き起こされる金融安定性の喪失に対応する予防戦略を策定しなければならない。そのために両当局者は、広い範囲の資産の流動性を恒常的に監視するとともに、流動性の量とコストと時間的側面に対応する広範な策を講じる重要性を認識しなければならない。

IMFはこの問題のより詳細な説明を10月7日発表する「国際金融安定性報告書」で明らかにする。