2018年10月 国際金融安定性報告書
Global Financial Stability Report, September 2018
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- 2018年10月 国際金融安定性報告書
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- Published: September 28, 2018
要旨と全体所見
- 危機後10年で金融規制の枠組みは改善し銀行システムも強化された一方、新たな脆弱性が生じており、国際金融システムが真に強靱になったかは実際に試されていない。
- 春のGFSR公表時と比べ、グローバルな金融安定性にかかる短期的なリスクは若干上昇しているが、金融環境は総じて緩和的で短期的な経済成長にはプラスに寄与している。
- 新興市場国への圧力や貿易摩擦が激化すればリスクは急増する可能性がある。緩和的な金融環境のもとで蓄積される脆弱性を背景に、中期的な金融不安定化リスクは高止まりしている。
短期的な金融リスクと金融環境
- この半年間でグローバル金融環境はわずかにタイト化し、先進国と新興国の差が拡大している。
- 先進国の金融環境は米国を中心に依然として緩和的で、歴史的にみれば金利水準は低くリスク選好は旺盛、主要市場の資産価格は上昇が続いている。
- 中国は外部環境悪化と規制強化に対応して金融政策を緩和し、金融環境は概ね安定的。
- 多くの新興市場国では4月中旬以降金融環境はタイト化。背景には対外資金調達コストの上昇、各国固有リスクの高まり、貿易摩擦の激化がある。
- IMFの資本フロー・アット・リスク分析では、中国を除く新興国で対内債券投資が4四半期で1,000億ドル(対象国のGDP合計の0.6%)以上引き揚げられる可能性が5パーセント程度あると推計。これは国際金融危機時の資本流出に相当する規模。
中期的なリスクと蓄積された脆弱性
- グロース・アット・リスク(GaR)による計測では、短期リスクは過去半年で若干上昇にとどまっているが、先進国の金融環境が急速にタイト化すれば短期リスクは大幅に上昇し得る。
- 新興国の対応力や政策信頼性への不信が高まれば、資本流出の激化や国際的なリスク回避姿勢の拡大を招く恐れがある。
- 貿易摩擦の広範な激化は投資家コンフィデンスを損ない経済拡大を阻害し得る。政治的、政策的不確実性(例:合意なしの英国のEU離脱やユーロ圏高債務国の財政政策への疑念)が市場心理を弱めリスク回避を高める可能性がある。
- インフレ上昇に応じて中央銀行の金融政策正常化が速まると国際的な金融環境が急にタイト化するリスクもある。市場参加者の金融環境タイト化リスクに対する認識は総じて甘いとされる。
- 先進国の非金融部門レバレッジの増加、融資審査基準の継続的劣化、行き過ぎた価格形成が問題。システム上重要な金融部門を抱える市場での非金融部門の債務総額は、2008年の113兆ドル(対象地域のGDP合計の200%強)から167兆ドル(同250%近く)に拡大している。
- 多数の新興国で対外借入が増加しており、対外的資金調達リスクや貿易ショックに脆弱で、十分な外貨準備や強固な国内投資家ベースを欠く国では困難な状況が生じ得る。新興国当局は資本流出圧力の増大に備えるべき。
ここ10年の規制改革の総括
- 世界金融危機後、国際的な金融規制の枠組みは再構築され、新たな基準・手法・実務が生まれ世界各国で施行されてきた。IMFも重要な役割を果たした。
- プラス面:バーゼルIIIの資本・流動性規制導入、銀行監督でのストレステストの広範な活用、影の銀行部門で問題となった活動の抑制、マクロプルーデンス担当組織の設立、銀行監督の強化(特に大規模行)、破綻処理スキームの改善等。
- マイナス面・懸念:資金調達と市場流動性の市場間分断の発生、国際銀行グループ傘下での流動性囲い込みのリスク、市場流動性の細分化。現在明確な総体的流動性低下の証拠はないが注視が必要。
政策提言と優先課題
- 規制改革を完遂し規制の後退は避けるべきである。潜在的システムリスクに対応するため、より積極的な金融規制・監督の活用が必要。
- 緩和的金融環境のもとで脆弱性が高まっている国は、カウンターシクリカル資本バッファーなど広く適用可能なマクロプルーデンス施策をより積極的に活用すべき。
- 銀行システム外の脆弱性に対応する新たなマクロプルーデンス手法の開発が必要。
- 規制監督当局はサイバーセキュリティ、フィンテック、従来の監督対象外の組織や活動による金融不安定化リスクにも備えるべき。
- 優先課題として、レバレッジ比率規制、多国間にまたがる銀行の破綻処理、保険会社のソルベンシー規制などの完全実施が挙げられる。
- マクロプルーデンス当局はシステミックリスクを抑制する政策ツールを十分に備えるべき。銀行の報酬体系や信用格付機関の利用方法など複雑な領域はさらなる進展と新たな発想が必要となる可能性がある。
- 規制は国際的協調のもとで進めるべきであり、規制改革の影響と意図せざる効果を幅広く検証し是正措置を講ずるべき。IMFは比例的アプローチを支持し、金融機関の重要性や各国の国際的重要性に比例して技術的基準や監督注力度を決定すべきとする。
- 規制改革の後退は規制差を悪用する行動を促し、当局間の緩和競争を招いて国際金融システムの安全性を損ない得る。
- 規制監督当局は新たなリスクへの警戒を継続し続けるべきであり、どのような規制体系でも危機の可能性はゼロにならないため謙虚な姿勢が必要。
出典: 2018年10月 国際金融安定性報告書(要旨)
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- 危機後10年を経て金融システムはより強靱に しかし、新たな脆弱性も