国際金融安定性報告書

ウクライナでの戦争の衝撃により金融システムの強靭性が試される
2022年4月

第1章は、ウクライナでの戦争による金融システムへの影響を検証する。一次産品価格の上昇により、中央銀行は両立困難な課題に取り組まなければならない。多くの新興市場国とフロンティア市場国が、特に難しい状況に直面している。中国では不動産部門が圧迫され続けていることや新型コロナ感染が改めて拡大していることから金融面の脆弱性が高いままだ。中銀は、回復を阻害しないまま、物価上昇圧力が長引く事態を避けるために断固たる行動を取るべきだ。政策当局者は、エネルギーの安全保障とグリーン化のトレードオフ(両立困難な課題)など、戦争によって際立った構造的な問題に対処しなければならない。
第2章は新興国市場で見られるソブリンと銀行の連関について協議する。新型コロナウイルスのパンデミックを通して、新興市場国の銀行部門が保有する自国ソブリン債の額が急速に増えた。公的債務が過去最高水準にあり国債格付け見通しが悪化するなか、マクロ金融環境の不安定化をもたらしかねない負のスパイラルに陥るリスクがある。第3章は、フィンテックの高リスク事業が急速に拡大していることによる金融安定性の課題を検証する。フィンテック企業と既存金融機関双方を対象とした、各々の部門の規模に相応する政策が必要である。
ウクライナでの戦争により、金融環境が逼迫し世界へのリスクが高まった。一次産品価格の急上昇により、中銀は両立困難な課題に取り組まなければならない。多くの新興市場国とフロンティア市場国が、特に難しい状況に直面している。中国では不動産部門が圧迫され続けていることや新型コロナ感染が改めて拡大していることから金融面の脆弱性が高いままだ。中銀は、回復を阻害しないまま、物価上昇圧力が長引く事態を避けるほか、金融の脆弱性に取り組むため、断固たる行動を取るべきだ。政策当局者は、エネルギー安全保障の観点にも留意しつつ、2021 年の国連気候変動会議(COP26)のロードマップを実現する努力を強化すべきである。


フィンテックは、効率性と競争を促し、金融サービスへのアクセスを広げることができる。ただ、リスクが高い事業分野での活動を急速に拡大しているほか、規制が不十分なことや、伝統的な金融システムとつながりがあることにより、金融安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。本章では、デジタル銀行(「ネオバンク」とも称される)と米国住宅ローン市場における定着しているフィンテック企業、分散型金融(decentralized finance=DeFi)の3種のフィンテックをケーススタディを用いて検討する。本章は、フィンテック企業と既存金融機関双方を対象とした各々の部門の規模に相応する政策 が必要であることを示す。DeFiに関しては、ステーブ ルコインの発行体や仮想資産の交換所など、仮想資産のエコシステムで DeFi を支える主体を重点 的に規制すべきである。