世界的なディスインフレが「最後の1マイル」に入りつつあり、短期的な金融安定性リスクは後退したが、中期的な脆弱性は高まっている

第1章では、世界的なディスインフレが「最後の1マイル」に入りつつあるとの期待が高まる中、短期的な金融安定性リスクが後退していることを示す。しかし最後の1マイルにはいくつかの顕著なリスクが存在するほか、中期的な脆弱性が高まりつつある。
第2章は、急速に拡大している資産クラスである企業向けプライベートクレジットにおける金融安定性の脆弱性と潜在的リスクを評価する。プライベートクレジットは従来、商業銀行によるローン市場や社債市場の外で中堅企業に対し融資を提供することが中心だった。プライベートクレジット市場の規模は今、他の主要な信用市場に匹敵するまでに拡大している。
第3章は、サイバーインシデントはこれまでのところ、金融システムを脅かすまでには至っていないが、重大なサイバーインシデントが起きる確率が高まっており、マクロ金融の安定性が大きな脅威にさらされていることを指摘する。

第1章 ディスインフレの最後の1マイルにある金融脆弱性

第2章 プライベートクレジットの増加とそのリスク
第2章は、急速に拡大している資産クラスであるプライベートクレジットにおける金融安定性の脆弱性と潜在的リスクを評価する。プライベートクレジットは従来、商業銀行によるローン市場や社債市場の外で中堅企業に対し融資を提供することが中心だった。プライベートクレジット市場の規模は今、他の主要な信用市場に匹敵するまでに拡大している。同章は、比較的脆弱な借り手や、流動性が低い投資ビークルの増加、重層的なレバレッジ、古い情報に基づき且つ主観的でありうるバリュエーション、市場参加者間の不透明な連関から生じる重要な脆弱性を特定する。プライベートクレジットは、透明性が改善しないまま緩いプルデンシャル監督下で急拡大し続ければ、こうした脆弱性がシステム上重要な意味を持つようになる恐れがある。
急速に増え相互に連関している同資産クラスが抱える潜在的リスクを踏まえ、当局はプライベートクレジットに関して、より積極的な規制監督体制を検討しうる。包括的にリスクを評価するためにはデータギャップの解消と報告義務の強化が鍵となる。当局はモニタリングを重視し、ファンドの流動性リスクと行為規範リスクに対処すべきである。これは、より高い償還リスクを抱えるファンド、特に個人投資家向けファンドで重要である。

第3章 サイバーリスク:マクロ金融安定性に対し高まる懸念
出版物

2025年10月
- 2025年10月「世界経済見通し」

2025年10月
- 2025年10月「金融安定性報告書」

2025年10月
- 「財政モニター」

2024年4月
- アジア太平洋地域経済見通し

2025年9月
- ステーブルコインと金融の未来


