過大な資産評価やソブリン債市場の圧力、ノンバンク金融機関の影響力の高まりを背景に、金融安定性リスクが依然として高い。外国為替や新興国債券の構造変化は、これらの市場に新たなリスクと頑健性をもたらしている。
過大な資産評価や、ソブリン債市場の圧力の高まり、ノンバンク金融機関の役割の拡大といったリスクを背景に、金融安定性リスクが高止まりしている。
第2章では、世界の外国為替(FX)市場が、十分な流動性を有しているにもかかわらず、依然としてマクロ金融の不確実性に対して脆弱であることを示す。市場へのショックによって資金調達コストが上昇し、ビッド・アスク・スプレッドが拡大し、ファンダメンタルズを超えた為替リターンのボラティリティが増大する可能性がある。こうした圧力は、通貨のミスマッチ、一部のディーラーへの集中、NBFIの参入拡大などの構造的な脆弱性によって、増幅されている。FX市場のストレスは他の資産クラスにも波及し、広範囲に金融環境がタイト化する可能性がある。
現地通貨建てソブリン債の発行と国内投資家による購入が増えたことは、新興国市場の頑健性を下支えしてきたが、多額の借り入れや、一部の投資家層への過度な依存、不十分な政策枠組みにより、金融安定を巡るリスクが生じる恐れがある。

第1章:静寂さの下で進む地殻変動:金融市場が変わる中での安定性の課題
ここ数か月で、貿易摩擦や地政学的緊張が高まり、政府債務が増加し、ノンバンク金融仲介機関(NBFI)とステーブルコインが伸び続けている。市場はこうした状況の変化を十分に警戒していないようである。バリュエーションは2025年4月の「国際金融安定性報告書」の公表以降、過熱水準に戻り、金融環境も緩和している。
金融安定性リスクは高止まりしている。バリュエーションモデルでは、リスク資産の価格がファンダメンタルズをはるかに上回っていることが示されており、急激な調整が生じるリスクが高まっている。ソブリン債市場は、財政赤字拡大の圧力に直面している。また、ストレステストの結果、銀行とNBFIの相互連関性が高まり、資産・負債の期間構造のミスマッチが増大していることが明らかになっており、これはショックを増幅させかねない。これらの脆弱性は互いに作用し合う。資産価格の急落や利回りの急上昇を受け、銀行のバランスシートに負荷がかかり、オープンエンド型ファンドを圧迫するおそれがある。銀行とNBFIの相互連関性が高まれば、ショックがこれまで以上に金融システム全体へ波及する。
政策当局者は警戒心を保たなければならない。優先事項としては、インフレ対策における中央銀行の独立性の維持、政府赤字の抑制、バーゼルIIIのような国際的に合意されたプルーデンス基準の推進、などが挙げられる。金融セーフティネットの強化や、NBFIの監視の向上、ステーブルコインの効果的な規制も、国際金融の安定性を保つために不可欠である。

第2章:世界の為替市場におけるリスクと頑健性

第3章:グローバルなショックと現地の市場:新興国のソブリン債市場を巡る情勢変化
出版物

2025年10月
- 2025年10月「世界経済見通し」

2025年10月
- 2025年10月「金融安定性報告書」

2025年10月
- 「財政モニター」

2024年4月
- アジア太平洋地域経済見通し

2025年9月
- ステーブルコインと金融の未来



