IMFのサーベイランス

2018年3月31日

国際通貨制度を監視し、加盟国189か国の経済政策や金融政策をモニタリングすることは、IMFが担っている主な役割のひとつです。この活動は「サーベイランス(政策監視)」として知られます。サーベイランスは世界全体、各地域、また各国を対象に行われますが、この過程でIMFは安定性に対する潜在的なリスクを特定し、経済成長を持続させ、金融面・経済面での安定性を促進するために必要な政策面での適切な調整を助言します。

IMF のサーベイランスが重要である理由

安定性や経済成長に対するリスクは、政策の調整による対策が必要かもしれません。こうしたリスクの特定には、IMFによる注意深いモニタリングが欠かせません。さらに、相互関係性が深まった現代の世界経済では、こうした取り組みに国際協力が不可欠です。今日の世界では、ある国の問題や政策が他の国々にも影響を及ぼしかねません。IMFには、ごく少数の例外を除いて、世界のすべての国々が加盟しており、こうした協力を促進できます。IMFによるサーベイランスには、各国それぞれに焦点をあてた国別サーベイランスと、世界経済の監視を行う多国間サーベイランスがあります。

加盟国との協議(国別サーベイランス)

IMFによるサーベイランスのために、通常は年に一度の加盟国訪問が行われます。IMF職員は加盟国に滞在している間に、政府や中央銀行の職員と経済の見通しやマクロ経済政策に関して協議を行います。こうした協議の中心テーマとなるのが為替相場や金融政策、財政政策、また、マクロ金融政策です。加えて、マクロ経済に非常に大きな影響を与える構造改革についても議論が行われます。また、IMF職員はその他のステークホルダーとも会合を持てるように努めます。例えば、国会議員、金融業界や産業界の代表者、労働組合や市民社会の人々が対象となります。このように幅広いグループの人々と議論することで、各国の経済政策や経済の見通しについて、より良い評価を行えるようになります。

IMF職員は評価を完了させた後に、報告書をIMF 理事会 での協議に向けて提出します。その後、報告書に対する理事会の見解が加盟国の政府当局に伝達され、これをもって「4条協議」と呼ばれるプロセスが完了します。ほとんどの加盟国について、IMF職員による報告書と理事会の見解を要約した プレスリリース が出され、職員の報告書も公表されます。

世界経済のモニタリング(多国間サーベイランス)

国別サーベイランスに加えて、IMFは各地域や世界経済の情勢をモニタリング・分析し、定期的に報告書を公表しています。「 世界経済見通し (WEO)」は短中期的な世界経済情勢についてIMFエコノミストの分析を示すもので、差し迫った課題として政策的な関心が高まっているテーマを取り上げます。また、この報告書は、世界経済の中心である経済大国のマクロ経済政策がもたらしうる波及効果について議論します。一方、「 国際金融安定性報告書 (GFSR)」は、世界の資本市場、また、金融の安定性に対してリスクとなりうる金融の不均衡や脆弱性を評価するものです。「 財政モニター 」は中期的な財政予測について最新情報を提供し、公共財政の動向を評価するものです。IMFは「 地域経済見通し (REO)」の公表も行っており、世界の主要地域について詳細に分析しています。

IMFは主要先進国・新興市場国20か国で構成されるG20など他のグループとも緊密に連携しており、2009年からは 相互評価プロセス を通じて国際経済協力を持続させようというG20の取り組みを支援してきました。バランスのとれた世界経済の成長を持続させるという目標と加盟国の政策がどれほど一貫するかの分析をIMFは行っています。「 対外セクター報告書 (ESR)」は世界で経済が最も大きい29か国とユーロ圏の対外収支を分析・評価するものです。この報告書では、経常収支、為替相場と対外バランスシート、資本フロー、外貨準備高について体系的な評価を行います。1年に2回、IMFは「 グローバル政策アジェンダ (GPA)」を公表していますが、これは多国間サーベイランスに基づく刊行物から主要な分析結果や政策助言をまとめており、IMFとその加盟国が今後進めていくべき様々な政策を提案するものです。

グローバルな課題の変化に応じて、サーベイランスを進化させる

世界経済の変化により適応しやすくするために、IMFは定期的にサーベイランスやモニタリング活動の見直しを行っています。2014年の 「3年ごとのサーベイランス見直し(TSR)」 では、世界金融危機以降のサーベイランスの発展が強化されました。国際的な金融の相互関係性がもたらす影響への認識が高まっていることを反映して、2011年の見直しでは多国間サーベイランスに焦点があてられました。この見直しを土台として2012年には「統合されたサーベイランス決定」が下され、加盟国それぞれについて国内や国際収支面での安定性や、システミックな安定性が中心テーマとして取り上げられました。2012年9月には、IMF理事会が「 金融部門サーベイランスに関する戦略 」を承認しましたが、これはIMFによるモニタリング活動をさらに強化するための具体的な手順を提案しています。こうした一連の改革が功を奏して、政策監視ツールキットが大きく改善し、法的枠組みが時代に即したものになりました。2014年のTSRではこうした改革が支持され、サーベイランスが今後も適応性の高いものであるべき必要性が認識されたほか、選択と集中について強調されました。

2014年の 「3年ごとのサーベイランス見直し(TSR)」 後に出された助言では、世界金融危機以降の課題を国々が乗り越えられるよう支援することに焦点があてられていました。主な優先事項としては、サーベイランスをより微細に調整することで、国際的な分析経験を活かして財政・金融・対外部門・構造政策の政策ミックスに関する助言を各国の状況にさらに合致したものとし、加盟国をクライアントとして重視したアプローチをとることが挙げられていました。2014年から2019年にかけては、サーベイランス実施上の優先項目として5点が設定されており、これはそれぞれ「リスクと波及効果」「マクロ金融サーベイランス」「構造政策の助言」「専門家による一貫性のある助言」「加盟国中心主義」です。IMF専務理事による「 サーベイランス強化のための行動計画 」には、こうした優先項目すべての実現に向けて必要な具体施策が記載されています。2018年に予定されている「サーベイランスの中間見直し」では、サーベイランスに関する計画がどの程度進捗しているかに関して、現状の評価を行うことになっています。また、実行の進捗について最新状況を把握し、既存の優先項目を実行するための次のステップを特定する予定です。次回の包括的なサーベイランス見直しは2019年に計画されています。