IMF サーベイランス

2016年9月30日

IMFは、国際通貨制度を監視するとともに、189の加盟国の経済及び金融部門政策のモニタリングを行います。サーベイランス(政策監視)と呼ばれるこの活動は、国際レベル及び国レベルで行なわれますが、この過程においてIMFは、安定性への考えうるリスクを明確にし、必要な政策調整について助言を行ないます。これによりIMFは、各国間における財、サービス、及び資本の交換を促進し金融と経済の安定に必要な条件を確保することで経済成長を維持するという、国際通貨制度の主な目的の達成に貢献しています

IMFサーベイランスの重要性

サーベイランスは、成長を維持するために政策による対処が必要となるであろうリスクを特定するうえで不可欠です。 一国の政策が他の多くの国に影響を及ぼすような今日のグローバル化した経済では、国際協力は不可欠です。ほぼ全世界の国にあたる189カ国が加盟するIMFは、この協力を促進します。IMFのサーベイランス活動には、各国の政策の評価と助言を行なう国別サーベイランス、および世界経済の監視を行なうマルチラテラル・サーベイランス(多国間政策監視)と、主に二つの側面があります。

加盟国との協議

IMFのエコノミストは、加盟国の経済を継続的に監視します。通常は年に一度、エコノミストが加盟国を訪問し、経済もしくは金融部門政策の調整が必要となる国内或いは世界の安定性リスクの有無について協議を行い、加盟国政府や中央銀行と、為替レート、金融、財政、金融部門に関する政策、及びマクロ・クリティカル(マクロ経済に決定的な意味を持つ)な構造改革を中心に協議します。対象国の経済政策や見通しを評価するにあたり、通常IMFのスタッフはミッションの際に、国会議員や、ビジネス、労働組合、更には市民社会の代表といった関係者とも協議を行ないます。

本部に戻った後スタッフは、IMF理事会での協議に向け報告書を提出します。その後、理事会の見解は加盟国当局に報告され、4 条協議と呼ばれるプロセスが終了します。 近年、サーベイランスの透明性は向上しています。現在ほぼ全ての加盟国が、理事会の見解の総括であるプレスリリースとIMFのスタッフ・レポートや関連分析の公表に同意しています。また、多くの加盟国が、IMFミッションの終了の際に、スタッフによる声明を発表しています。

世界情勢をより大きな枠組みで監視する

IMFは、世界及び地域レベルで経済情勢をモニタリングするとともに、加盟国の諸政策の世界経済への波及効果を分析します。マルチラテラル・サーベイランスは主に、定期的に発表される世界経済見通し (WEO)、国際金融安定性報告書 (GFSR)、および 財政モニターを通して行われます。WEOは、世界経済とその成長見通しに関する詳細な分析を提示し、世界的な金融の混乱のマクロ経済への影響といった問題に取り組みます。また、システミックな国や地域における経済政策・金融政策の国境を越える影響に特に焦点を当てながら、主な潜在的な世界的波及効果を評価します。GFSRは、世界の資本市場の情勢、そして金融の安定性にリスクをもたらす金融の不均衡や脆弱性を評価します。財政モニターは、最新の中期的な財政見通しを提示するとともに、公共財政の情勢を評価します。

さらに、世界の主要地域を対象により詳細な分析を行なう地域経済見通し も作成します。また、主要な先進並びに新興市場国・地域からなるG20をはじめ、他のグループとも緊密に連携しています。2009年以降IMFは、相互評価プロセスを通し国際的な経済協力の継続を目指すG20の取り組みを支援しています。IMFは、G20参加国・地域が追求している政策と、持続的かつ均衡ある世界経済の成長との整合性について分析を行っています。

2012年からは対外部門の安定性に関するパイロット報告書を作成しています。これは、金融システムで重要な位置を占める国や地域の対外ポジションを、世界レベルで一貫した手法で分析するものです。また、IMFは様々な多国間報告書の主な分析結果や政策助言をまとめ、IMFと加盟国の今後の課題を明示する グローバル政策アジェンダを年に 2 回作成しています。

サーベイランスの役割の維持

固定為替相場制を採用したブレトンウッズ体制の崩壊に伴い、1970年代後半にIMF協定第4条が見直され、これにより現在の形でのサーベイランスが確立されました。第4条において、加盟国はIMF及び他の加盟国と協力し、安定性の促進に努めると規定されています。一方IMFに対しては(i)国際通貨制度の実効的機能を確保すべく、国際通貨制度を監督し、(ii)加盟国の政策上の義務の遵守状況を監視することを責務と定めています。

IMFはサーベイランス活動のレビューを定期的に行います。2011年の 3年毎のサーベイランス・レビュー(TSR)により、 危機以前のサーベイランスの脆弱性への対処の面での進展が明らかになるとともに大きなギャップが存在することも浮き彫りとなりました。なかでも、リスク評価は詳細に欠け連関性やショックの伝播の問題を重視していないなど、サーベイランスは非常に断片的だと受け止められていました。2011年のTSRは、相互連関性、リスク評価、対外安定性、金融の安定性、影響力と法的枠組みといった主要6分野の改善を提言しました。

サーベイランス改善の取り組みの一環として、2012 年 7 月、理事会はサーベイランスの基礎を成す法的枠組みを強化するために、国別サーベイランスおよびマルチラテラルに関する新たな決定(新たな決定統合されたサーベイランス決定)を採択するとともに、対外部門の安定性に関するパイロット報告書の第1版について協議しました。2012年9月には、金融部門のサーベイランスを一段と強化するための具体的かつ優先的な措置を提言する新たな金融部門サーベイランスに関する戦略を承認しました。こうした措置によりIMFはこれまで以上に、世界の安定性に対する加盟国の政策の波及効果に対処し、より包括的に加盟国の対外部門をモニターし、加盟国を建設的な対話により効果的に関与させ、国際通貨制度の効果的な運営をより良く保護するとともに、世界の経済・金融の安定性を支えることができます。

2014年9月に終了した2014年のTSRは、最近の改革を基に、リスクと波及効果の分析の統合と深化、マクロ金融のサーベイランスの重視、労働市場問題を含めた構造政策の一層の重視、よりまとまりのある専門家による政策助言の提供、明確で率直な意思疎通によるクライアントを重視したサーベイランスへのアプローチといった、サーベイランス強化のための運営上の5つの優先課題を明示しています。専務理事の「サーベイランス強化のための行動計画」は、最新の「4条協議サーベイランスのためのガイダンスノート」を含めこうした優先分野における前向きの作業を行うための具体的な措置の概要を示しています。2014年9月には、金融セクター評価プログラムも終了しました。サーベイランス強化に向け、IMF理事会と協議しながらこうした優先分野ひとつひとつで様々な措置がとられています。定期的なサーベイランスの見直しは、5年間のサイクルで行われるようになりました。進捗状況は、2017年の中間評価で見直されます。