2016年IMF年次報告書では、ミャンマー及びその他の国・地域での能力開発について特集している。
(写真:Nathalie Cuvelier/robertharding/Newscom)

IMF、全世界からの能力開発への要請に対処

2016年9月27日

  • IMFは6年連続で能力開発への支出を増加、昨年度は2億5,600万ドル
  • IMFの技術支援と研修で最大のシェアを占めるのはアフリカ
  • IMF、16カ国に92億ドルの新規融資を承認。うち、13カ国は低所得途上国向け

IMFの専門的な助言、すなわち技術支援と研修―能力開発と呼ばれる―は、IMFの活動の4分の1超を占める(図1)。IMFの技術支援の約半分を低所得途上国が、その残りの大半を新興市場国・地域が占める。一部の先進国・地域も域技術支援を受けている。全地域のうち、技術支援の最大シェアを占めているのはサブサハラ・アフリカである(図2)。



地域的プローチ

太平洋地域、カリブ地域、アフリカ、中東及び中央アメリカにあるIMF地域技術支援センターのグローバルネットワークは、加盟国が成長を促進し貧困を削減するための政策を立案し実行するための、人材や組織・制度の能力強化を支援する。この地域的アプローチにより、IMFは各地域固有のニーズに応じたよりきめ細かな支援が可能となり、また、支援を行う他の機関とより緊密に連携することができるほか、新たなニーズにより迅速に対応し、地域統合を進めることができるようになる。

2016年度にIMFは、インド政府とニューデリーを拠点とする南アジア地域研修・技術支援センターの新規設立に関する協定に署名した。この新しいセンターは、インド、韓国及びオーストラリアからの早期資金協力により実現したもので、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、スリランカを対象に支援を行っていく。

IMFの技術支援センターは、金融セクターの監督、税と関税行政、中期歳出の枠組みと公共財政管理、金融市場及び金融政策の枠組み、マクロ経済の統計データなど、加盟国が国連の持続可能な開発目標に向かって前進するための鍵となるトピックに集中的に取り組んでいる。これらトピックの中でも要請が多いのは財政問題である(図3)。




IMFへの入口

「2016年 IMF年次報告書―解決策を共に見出す」 では、特集記事、テーマ主題型の編成、インフォグラフィックをオンライン上のイノベーションと組み合わせて掲載している。「スポットライト」のセクションでは、2015年5月1日~2016年4月30日会計年度中に実施された、IMFの理事会、マネジメント、スタッフの重要な活動について取り上げている。例えば、クォータ改革、IMFの特別引出権 (SDR) の決定に使用される通貨バスケットに中国の通貨である元を追加したこと、及びIMFの開発資金調達への貢献である。

年次報告書全体にある「一口メモ」タブでは、時に複雑とされる項目、たとえばIMFのクォータの仕組み、10月1日に実施されるSDRバスケットの変更点などついて平易な用語で解説している。「地域ハイライト」のセクションには、急増する難民の経済的影響、及び中東の難民の母国と欧州の難民受入国への影響に関する特別レポートが掲載されている。

図表及びその他のグラフィックは、この1年におけるIMFの中核となる3つの活動を示す。能力開発作業に加え、IMFは個々の加盟国の経済政策及び金融部門政策のレビューを117回行い、世界と地域の経済動向、及び加盟国の政策から世界経済への波及効果の分析も実施した。また、13の低所得途上国への低金利またはゼロ金利融資12億ドルを含め、16加盟国に対して新たな融資を92億ドル承認した。

本報告書の印刷版は8カ国語で出版される(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、日本語、ロシア語、スペイン語)。CD-ROMは 英語のみ。現在htmlフォーマットに完全に対応している 年次報告書のウェブページには、2016年IMF財務諸表及びその他の背景文書が掲載されており、中国語、フランス語、スペイン語に対応している。年次報告書 、財務諸表及びCD-ROMは無料で入手可能。問い合わせは、IMF Publication Services, P.O.Box 92780, Washington, DC 20090(郵便)、または、www.imfbookstore.org或いは www.elibrary.imf.org(オンライン)、 publications@imf.org (電子メール)まで。

成果を挙げるIMF能力開発
IMFは、専門分野のいくつかのトピックに関して技術支援を行っている。加盟国での要請の大半は、税制改革などの財政問題、次に金融財政セクター、統計、法的問題が続く。IMF能力開発活動は、加盟国とIMF間で継続中の政策対話と統合される。 

ミャンマー: 50年にわたる比較的孤立した状態から脱したミャンマーは、IMFの支援を得て策定した税制改革戦略を開始し、2012年以降主要な税収からの歳入は毎年平均20%超増加している。

マリ: IMFの技術支援により、2018年までに政府歳入の30%を同国の各地域に徐々に移転している。

ウクライナ: 経済と金融セクターがソ連から独立以来最も深刻な危機から抜け出すなかで、IMFの支援は、銀行の監督、外国為替市場、国内での債券の発行、金融政策、及び中央銀行の構造の改革に一役買っている

パラグアイ: IMFの支援では、リスクベースの銀行監督、及びインフレーション・ターゲティングの実践に集中的に取り組んだ。

中央アジア: アゼルバイジャン、キルギス共和国及びタジキスタンでは、IMFから支援を受けて対外セクター統計を改善してきた。加盟国は、経済に関する意思決定の基盤として、質の高いマクロ経済統計を必要としている

ミャンマーとウクライナ: 資金洗浄及びテロ資金対策においてIMFの技術支援を受けた。