中央銀行の革命者
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- 中央銀行の革命者
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- Authors: PRAKASH LOUNGANI
- Published: March 13, 2023
概要
- スウェーデン国立銀行元副総裁であり、インフレターゲット革命を主導したラース・E・O・スヴェンソンの経歴と主な政策貢献を紹介する記事(プラカシュ・ラウンガニ、2023年3月)。
- 文脈として、2021年のインフレ急加速や過去30年にわたる中央銀行運営の改善が挙げられる。
- 記事はスヴェンソンの政策提言、実務経験、学術的貢献、及びその後の影響を中心にまとめられている。
経歴と経路
- 学歴・初期経歴:
- 1971年にストックホルムのスウェーデン王立工科大学で物理と応用数学の科学修士課程を修了。
- ストックホルムで経済学博士を取得し、マサチューセッツ工科大学で1年間学ぶ。
- 初職はストックホルム大学国際経済研究所で、1970年代から1980年代に主に経済理論と国際経済を研究。
- 職歴:
- スウェーデン国立銀行の外部顧問を経て、1990年代に金融経済へ集中。
- 2001年にプリンストン大学経済学部へ移籍。
- 2007年にスウェーデン国立銀行副総裁として復帰し、2013年中旬の任期満了で退任。
- 年齢: 75歳(記事記載時点で現役で研究を継続)。
インフレターゲットと政策貢献
- インフレターゲットの導入支援:
- スウェーデン国立銀行は1993年前半にインフレターゲットを導入し、1995年までに達成すべき長期目標を2%と設定。
- 1989年から1990年にかけてのニュージーランド準備銀行の先行事例、1991年のカナダ銀行の導入と成功を参照。
- スヴェンソンの立場:
- 「小幅なインフレ率の変動」を目指す金融政策を提唱。
- 中央銀行はインフレ目標達成と完全雇用の両方を考慮すべきとの柔軟なインフレターゲットの導入を強く主張。
- 公的説明責任(将来的な政策の道筋の公表)強化を提案。
インフレ予測ターゲティング(Inflation Forecast Targeting)
- 中核的提言:
- 1997年の論文で、中央銀行は自らのインフレ・雇用予測がインフレ目標と完全雇用に導く「適切な」ものであるように、現在および将来の金利の道筋を選択・公表すべきと提案。
- 実務への影響:
- ノルウェー銀行、スウェーデン国立銀行、チェコ国立銀行などが金利の道筋を公開し始めた。
- フォワード・ガイダンスと組み合わせることで、金融政策の透明性と信頼性を向上させる役割を果たした。
マイナス金利への移行
- 背景:
- グレートリセッション後、多くの中央銀行が金利を0%近傍まで引き下げたが、追加の政策余地が必要となった。
- スヴェンソンの提案:
- マイナス金利の導入と預金手数料の徴収により、銀行の貸し出しを促し、消費を増やすことを提唱。
- 実例と評価:
- デンマークの中央銀行が2012年にマイナス金利を導入し、欧州中央銀行と複数国がこれに続く。
- 一部エコノミストは、適切に運用されればマイナス金利は総需要と雇用を増加させ得ると主張(引用:ケン・ロゴフの見解)。
金融政策と金融安定の分離(個別対応の主張)
- スヴェンソンの主張:
- 金融安定の考慮事項はマクロプルデンシャル政策に委ね、金融政策はインフレと産出量の目標のみを念頭に置くべき。
- 「異なるものは個別に行うのが一番良い」と論証。
- 根拠と費用対効果:
- 金利を利上げして金融安定(危機発生確率低下)を図ることは、利益が少なく不確実性が高い。
- 一方、高失業率とデフレ圧力を抑える効果は大きく確実性も高い。
- この費用対効果の計算は2015年のIMFスタッフペーパーで紹介され、同紙は多くの場合で費用が利益を上回ると結論付けている。
- 実地事例:
- スウェーデン国立銀行は2009年7月までに政策金利を0.25%まで引き下げたが、2010年に利上げを開始した。その後2014年に金利引き上げの効果は限定的で、2015年にはマイナス金利導入に踏み切った。
評価、論争、影響
- 支持と批判:
- ベン・バーナンキら著名エコノミストがスヴェンソンの洞察と独立的思考を高く評価。
- 2010年から2011年のスウェーデンでの利上げに対するスヴェンソンの反対は、後に2014年のデフレと経済減速により正当化される側面が示された。
- 学術的・実務的影響:
- スヴェンソンの研究は金融政策の透明性、フォワード・ガイダンス、インフレ予測ターゲティング、マイナス金利といった実務的手法の普及と改善に寄与。
- 彼の議論は中央銀行の危機対応能力向上に役立ち、グレートリセッションでの大恐慌回避にも貢献したと位置付けられている。
最近の研究と現在の活動
- 最新の論文では、住宅価格の年収倍率など一般的指標が誤解を招く可能性を示し、誤った政策判断につながる危険を指摘。
- さらに、未払いの住宅ローン債務水準が高い世帯ほど、危機時に出費を削るという通念に異議を唱えている。
- 現在も研究を続け、金融政策に関する従来の通念に挑戦し続けている。
出典: 中央銀行の革命者 — IMF(プラカシュ・ラウンガニ), 2023年3月