世界経済、今のところ戦争のショックに持ちこたえる
IMF Blog, June 15, 2026
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- 世界経済、今のところ戦争のショックに持ちこたえる
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- Authors: Kristalina Georgieva
- Published: June 15, 2026
概要と現在の評価
- 中東での戦争が始まって3か月以上が経つ今、世界経済は持ちこたえている。
- 一次産品価格、インフレ、インフレ期待、金融環境はすべて影響を受けているが、世界的な景気減速を示唆するような規模ではまだない。
- 世界最大の経済大国である米国と中国では、経済活動の勢いが好調である。
- 世界全体ではレジリエンスが見られるが、それは国や地域間の大きな相違を覆い隠している。
- ホルムズ海峡の長期にわたる封鎖や、戦闘で破壊された中東のインフラを踏まえると、不確実性とリスクは依然として高い。
- 世界情勢に関する最新の分析は、7月8日に「世界経済見通し(WEO)改訂版」で公表する。
これまで世界経済のレジリエンスを支えてきた要因
- 原油価格は現在、戦争前の水準より30%高いが、海峡が長きにわたり封鎖されているにもかかわらず、戦争初期に見られた水準よりも低い。
- 中国など一部の国は、豊富な石油備蓄を活用することで混乱を緩和している。
- 湾岸諸国以外での生産・製油の加速は、ショックを相殺するには十分ではないものの、原油価格の上昇を抑制した。
- 需要を鈍化させたり価格転嫁を抑制したりする措置によって、これまでのところ影響は抑えられているが、高い予算コストと対外資金調達ニーズの高まりを、各国が維持できる期間には限界がある。
- 中期的なインフレ期待は概して安定している。これは中央銀行の物価安定へのコミットメントに対する信頼を示す兆候である。
- 金融市場はレジリエンスを示してきた。国債利回りは戦争開始以来大幅に上昇したが、リスク資産は好調な企業利益を受けて反発しており、広範にわたる安全資産への逃避の兆しはほとんど見られない。
- 歴史的な基準に照らすと、金融環境は緩和的な状態が続いている。
- テクノロジー関連の投資(特に人工知能(AI)やデータセンター)が経済の勢いを維持する原動力となっている。米国はこうした世界的なテクノロジーサイクルの恩恵を受け、アジアの国々もテクノロジー輸出が好調である。
- ただし、大半の国はテクノロジーの生産性や成長への影響をまだ実感できておらず、経済格差の進行が懸念されている。
- 経済のレジリエンスとテクノロジーの進歩が組み合わさり、エネルギー供給ショックの影響を緩和しているが、地理的条件やエネルギー依存度、政策余地が限られている国はより大きな打撃を受けている。
最も大きな打撃を受けた国々と地域別影響
- 戦争の影響については、距離が大きな要素となる。
- 湾岸諸国の石油輸出国は今年、成長率が大幅に下方改定される。8か国中5か国は、経済が明らかに縮小している。
- 欧州(石油とガスの輸入に大きく依存している国々)では、エネルギー価格の上昇が成長を圧迫し、インフレに上昇圧力をかけている。ECBは最近金利を引き上げた。
- アジアでは、石油・ガス集約度が相対的に高い新興市場国が打撃を受けている。こうした国々では、ガソリンの小売価格が戦争勃発以来40%上昇している。
- 国債利回りの上昇と通貨安、資本流出圧力がショックのコストを増幅させている。
- エネルギー輸入への依存度が高く、政策余地が限られている国がとりわけ大きな打撃を受けている。
- アフリカではひっ迫が特に目立つ。輸入に大きく依存している域内の国々は、コストの増加によって対外収支が悪化し、資金調達ニーズと予算圧力が高まっている。
- エチオピア、マラウイ、ザンビアなどいくつかのアフリカ諸国は燃料不足に対処している。大半の国が燃料価格の高騰の痛みを感じている。
- レソトやルワンダ、タンザニアでは、戦争が始まって以降、ガソリン価格が約50%上がっている。
- エネルギー価格の上昇により肥料や食料のコストも上がり、食料不安のリスクが高まっている。混乱が長引けば、多くの低所得国の農家は苦境に立たされる可能性がある。
- この結果、今後数か月間、インフレがさらに加速するかもしれない。
必要な政策の方向性(規律と機動性)
- 影響はエネルギー供給ショックの期間と強度に大きく依存する。供給の回復には時間がかかる可能性があるため、解決が早ければ早いほど良い。
- 不確実性が高い状態が続いているため、すべての政策当局者が機敏で規律ある態勢を保つ必要がある。
- 物価安定を維持することは不可欠である。一部の中央銀行はすでに、インフレ期待を安定させるために金融政策を引き締め始めている。
- 借入コストが高まる中、財政規律も重要である。
- 価格上限や補助金、それに類する介入は人気があるかもしれないが、コストが大きい。
- 財政対応は、財政を損なうことなく脆弱な層を守るべく、的を絞った一時的なものとすること、価格シグナルを維持すること、適切な順序付けをすること、が重要である。
- AI主導の成長を繁栄の共有につなげるためには財政コストがかかる。その財政余地を作る必要性を考えると、先の財政対応はなおさら重要である。
- 財政コストには、新たな脆弱性に対処するための対策と、新興国・発展途上国が取り残されないようにするためのテクノロジーと人への投資の両方が含まれる。
IMFの支援と対応
- IMFは加盟国の異なるニーズを満たすよう支援をそれぞれに合わせている。
- 今のところ大半の加盟国は資金面での支援よりも、明確で率直な政策ガイダンスを求めている。IMFは状況に応じた政策助言と能力開発を提供している。
- 資金面での支援を必要としている国々へも、IMFは支援を強化している。
- 複数の国と取り組みながら、ショックへの対応として既存のプログラムを調整するための提案を近日中に理事会に提出する予定である。
- 個別の対応状況(本文記載の国名と進捗状況):
- ガンビアはプログラムの拡充と延長を要請している。
- ブルキナファソは、増大する外部資金ニーズに対応するための融資拡大について、職員レベルの合意に達した。
- エチオピアは、融資の前倒し実施を目指している。
- マラウイは新規プログラムに関する協議を開始した。
- バングラデシュも新しいプログラムを要請した。
- IMFは厳戒態勢を保ち、ショックを管理し、特に脆弱な層に対するショックの負の影響を抑制するためにこれらの国々と協働していく。加盟国に対するIMFのコミットメントは揺るがない。
クリスタリナ・ゲオルギエバ、2026年6月15日