プレスリリース No. 25/348

第52回国際通貨金融委員会(IMFC)議長声明(仮訳)

2025年10月18日

    世界経済は大きな構造変化の途上にあると共に、高まる不確実性に直面しており、これは課題を伴う一方、新たな機会ももたらしている。成長は底堅いが、緊張も生じつつある。我々は、信認を高め、強靱性を構築し、マクロ経済及び金融の安定を守るための健全な政策を採用していく。我々は、グローバル課題への対応に向けて協力を継続する。進行中の戦争及び紛争は、甚大な人道的犠牲をもたらし続けていると同時に、経済的にも多大なコストと重大な負のスピルオーバーを引き起こしている。持続可能な成長及び長期的安定のためには、戦争と紛争を終結させ、世界における恒久的な平和を確保することが依然として不可欠である。

    IMFCメンバーは、以下の文言に合意した。

    1. 世界経済は大きな構造変化の途上にある。貿易その他の分野における主要な政策転換は、不確実性を高めながら、世界のマーケットや政策枠組みを再構成しつつある。こうした変化に加え、デジタル化や人口動態の変化といった変革要因は、課題を伴う一方、新たな機会ももたらしている。成長は底堅いが、ひずみも生じつつある。ディスインフレーションは継続すると見込まれるが、各国間で顕著なばらつきが見られる。低成長、高い債務残高、より頻繁な異常気象や自然災害、貿易の緊張、過度のグローバル・インバランスという困難な状況下、先行きのリスクは下方に傾いている。進行中の戦争及び紛争は、甚大な人道的犠牲をもたらし続けていると同時に、経済的にも多大なコストと重大な負のスピルオーバーを引き起こしている。
    1. 我々は、信認を高め、強靱性を構築し、マクロ経済及び金融の安定を守るための健全な政策を採用していく。強固な経済機関、とりわけ、独立した中央銀行は、政策の信頼性と信用にとって不可欠であり続けている。我々は、財政政策を適切に調整し、必要に応じて、債務の持続可能性を確保し、バッファーを再構築するための財政調整への転換を一層進める。こうした調整は、国内資金を動員し、歳出の効率を改善し、成長を促進する官民投資と生産性の向上を支援し、社会の一体性を維持しつつ、信頼に足る中期的戦略で支えられるべきである。中央銀行は引き続き、それぞれのマンデートと整合的に、物価の安定を維持することに強くコミットしており、データに基づきかつ明確に意思疎通を行う形で、政策を引き続き調整する。我々は引き続き、国際基準を遵守し、金融と技術のイノベーションの恩恵を活用しながら、AI、ノンバンク金融機関、デジタル資産に起因するシステミックリスクに関するサーベイランスの強化を含む、金融の脆弱性と金融の安定に対するリスクを注意深く監視し、対処する。我々はまた、ビジネス環境を改善し、必要に応じて規制を合理化し、腐敗と戦い、技術革新と技術導入を動員するため、構造改革を推進する。我々は、グローバル課題に対処し、国際通貨システムの安定と効果的な機能を確保するため、協力し続ける。我々は、公正で開かれた世界経済を支えるべく、各国固有の改革や多国間の協調を通じて、過度なグローバル・インバランスに対処するために協働する。我々は、2021 年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認する。
    1. 我々は、脆弱で紛争の影響を受けた国や小規模開発途上国を含む、低所得国や脆弱国が直面する課題に特別な注意を払いつつ、改革を実施し、債務脆弱性に対処する国々への支援を継続する。我々は、IMFに対し、低所得国の債務脆弱性について、対処するための政策の選択肢を含む作業の深化を求める。我々は、G20の「共通枠組」(CF)及びそれ以外の下での債務措置の進捗を歓迎する。我々は、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で「共通枠組」の実施を強化することを含め、効果的、包括的かつ体系的にグローバルな債務脆弱性に対処することに引き続きコミットする。我々は、民間債権者を含む全ての利害関係者に債務透明性の向上を求める。我々は、「公的債務に係るグローバルラウンドテーブル」における更なる進展を期待する。我々は、成長を促進させる強固な改革の実施、国内資金の動員、民間資本の誘引等への支援を通じて、「3本柱のアプローチ」の下、持続可能な債務を有しつつも高い債務返済圧力を抱える国々を支援する、IMF及び世界銀行による取組を支持する。我々は、「低所得国向け債務持続可能性枠組み(LIC-DSF)」の見直しに期待する。
    1. 我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダを歓迎する。
    1. 我々は、サーベイランスが、経済の強靭性強化、マクロ経済及び金融安定の保護、債務持続可能性の確保、持続可能な成長の促進、世界経済の秩序ある再均衡の実現に役立つよう、各国の状況に応じた率直な助言に焦点を当てることを支持する。我々は、将来のサーベイランスの優先事項や方法を定める、現在進行中の「包括的サーベイランスレビュー」、進展する金融安定リスクに対して金融サーベイランスの足並みを揃えるための「金融セクター評価プログラムのレビュー」、そして、過度なグローバル・インバランスの要因に対する分析を強化するための更なる作業に期待する。
    1. 我々は、IMFと地域金融取極との連携強化に関する議論を含む、グローバル金融セーフティ・ネットに対する最近の検証作業を歓迎する。我々は、IMF支援プログラムの効果を更に高め、対外持続可能性の回復及び強靭性強化のための加盟国の努力をより効果的に支援するための、現在進行中の「プログラムデザインとコンディショナリティのレビュー」、及び「短期流動性ラインのレビュー」に期待する。我々は、自立的な融資能力を確保するための、「貧困削減・成長トラスト」改革の迅速かつ完全な実施を求める。
    1. 我々は、能力開発(CD)を「2024年能力開発戦略」に沿って一層強化し、能力開発資金の持続可能性を確保するための取組を支持する。我々は、政策アドバイスやプログラムデザインとより統合的な、柔軟で状況に合わせた提供を継続的に支援する。
    1. 我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、「第16次クォータ一般見直し」の下でのクォータ増資への同意に係る国内承認を進めており、更なる遅滞なく完了することを期待する。我々は、クォータシェアの調整は、最も貧しい加盟国のクォータシェアを守りつつ、加盟国の世界経済に占める相対的な地位をより良く反映させることを目的とするべきであると認識する。我々は、ディリヤ宣言に基づき、2026年の春会合までにIMFのクォータ及びガバナンスに関する将来の議論を導くための原則策定に向けた作業を進めている。
    1. 我々は、効率性向上及び加盟国に対する最良の価値提供のための、IMFにおいて進行中の業務効率化の取組を歓迎する。我々は、スタッフの、IMFの能力本位の制度の下での質の高い取組と献身への感謝を改めて強調するとともに、スタッフの地位における地域的なあるいは女性の代表性、また、理事会や理事会の指導的な地位における女性の代表性を向上するための更なる努力を奨励する。

    10. 次回IMFC会合は、2026年4月に開催される予定である。

     

    国際通貨金融委員会

    参加者一覧

    2025年10月17日(金) ワシントンDC

    議長

    ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国

    専務理事

    クリスタリナ・ゲオルギエバ

    委員会

    アイマン・アルサヤリ、総裁、サウジアラビア中央銀行(ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国―代理)

    ムハンマド・ビン・ハディ・アル・フッセイニ、財務大臣、アラブ首長国連邦*

    エドガー・アマドール、大蔵公債大臣、メキシコ

    スコット・ベッセント、財務長官、アメリカ合衆国

    エドワ・ノーマン・ビゲンダコ、総裁、ブルンジ中央銀行

    ルイス・カプート、経済大臣、アルゼンチン共和国

    ティフ・マックレム、総裁、カナダ銀行(フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ、財務大臣、カナダ ―代理)

    オラエミ・マイケル・カルドソ、総裁、ナイジェリア中央銀行(アデバヨ・オラワリ・イーデン、財務大臣兼経済担当調整大臣、ナイジェリア―代理)

    ファビオ・パネッタ、総裁、イタリア銀行(ジャンカルロ・ジョルゲッティ、経済・財務大臣、イタリア―代理)

    ガブリエル・ガリポロ、総裁、ブラジル中央銀行(フェルナンド・アダジ、財務大臣、ブラジル―代理)

    エールコ・ハイネン、財務大臣、オランダ

    植田和男、総裁、日本銀行(加藤勝信、財務大臣、日本―代理)

    マルティン・シュレーゲル、理事長、スイス国立銀行(カリン・ケラー=ズッター、財務大臣、スイス連邦―代理)

    レセチャ・クガニャゴ、総裁、南アフリカ準備銀行

    ラース・クリングバイル、財務大臣、ドイツ連邦共和国

    ク・ユンチョル、副首相兼企画財政部長官、大韓民国

    フランソワ・ビルロワドガロー、総裁、フランス銀行(ロラン・レスキュール、経済・財務・産業及びエネルギー主権大臣、フランス共和国 ―代理)

    ステファニー・ロース、経済担当大臣、デンマーク

    潘功勝、総裁、中国人民銀行

    レイチェル・リーブス、財務大臣、英国

    グルナラ・ハイダルシナ、局長、ロシア中央銀行(アントン・シルアノフ、財務大臣、ロシア連邦 ―代理)

    サンジャイ・マルホトラ、総裁、インド準備銀行(ニルマラ・シタラマン、財務大臣、インド―代理)

    メフメト・シムシェキ、国庫・財務大臣、トルコ共和国

    サラー=エディヌ・タレブ、総裁、アルジェリア中央銀行

    ペリー・ワルジヨ、総裁、インドネシア中央銀行

    オブザーバー

    パブロ・エルナンデス・デコス、総支配人、国際決済銀行(BIS)

    エリサベト・スヴァントソン、議長、合同開発委員会、及び財務大臣、スウェーデン

    クリスティーヌ・ラガルド、総裁、欧州中央銀行(ECB)

    ヴァルディス・ドムブロフスキス、経済・生産性担当委員、欧州委員会(EC)

    アンドリュー・ベイリー、議長、金融安定理事会 (FSB)及び総裁、イングランド銀行

    アンバー・バース、事務所長、米国・カナダ事務所、国際労働機関(ILO)

    マティアス・コーマン、事務総長、経済協力開発機構(OECD)

    モハナッド・アルスワイダン、石油研究局経済アナリスト、石油輸出国機構 (OPEC)

    ナビド・ハニフ、経済開発担当事務次長補、国際連合(UN)

    ペネロピ・ホーキンズ、部長、債務開発金融部、国連貿易開発会議 (UNCTAD)

    アジェイ・バンガ、総裁、世界銀行(WB)グループ

    ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ、事務局長、世界貿易機関 (WTO)

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    * オンライン参加

    IMFコミュニケーション局
    メディア・リレーションズ

    プレスオフィサー: Wafa Amr WAmr@imf.org

    電話:+1 202 623-7100Eメール: MEDIA@IMF.org