IMF の融資制度

2021年5月11日

国際通貨基金(IMF)は危機に直面する国に対して融資による支援を行い、その国が経済の安定と成長の回復に向けて調整政策を実施する上で、余裕を持てるように支援します。また、危機を防ぎ、危機に備えるための予防的融資も提供しています。IMFの融資ツールキットは、変化する加盟国のニーズに応えるため、継続的に改良されています。

危機の原因

危機の原因は多様かつ複雑で、国内要因によるもの、国外要因によるもの、そして、この両方が重なる場合があります。

  • 国内要因

    国内要因の例としては、不適切な財政政策や金融政策がありますが、こうした政策によって大幅な経常赤字や財政赤字、多額の対外債務や公的債務といった深刻な経済的不均衡が生じる可能性があります。また、別の例ですが、為替レートが不適当な水準に設定されると、競争力が損なわれ、長期的な経常赤字や外貨準備高の損失を招く恐れがあります。さらには、金融システムが脆弱な場合には、景気が急激に加熱したり、急後退したりしかねません。政情不安や脆弱な社会制度も、経済的な脆弱性を悪化させることで、危機を引き起こす原因となることがあります。

  • 国外要因

国外要因には自然災害から一次産品価格の大幅な変動に至るまで、様々なショックが含まれます。これらは、ショックに備える能力が限られており、少数の輸出製品に依存している低所得国にとっては特に典型的な危機の原因となっています。また、グローバル化の進む経済では、市場心理の急な変化によって、資本移動の変動性が高まることもあります。ファンダメンタルズが健全な国であっても、他国の経済危機や政策から大きな打撃を受ける可能性があります。新型コロナウイルス流行は世界中の国々に悪影響をもたらした外的ショックの一例となりました。

原因が国内要因であれ、国外要因であれ、危機は様々な形で発生します。不可欠な輸入品に対する支払いが不可能になった国や、対外債務を返済できなくなった国には、国際収支上の問題が生じます。一方で、流動性が不足したり、債務超過に陥ったりした金融機関は金融危機を招きます。また、過剰な財政赤字や債務は、財政危機をもたらします。IMFに支援を要請する国々には、ひとつのセクターの課題が経済全体に広がり、複数のタイプの危機に直面している状況が頻繁に見られます。一般的に危機の結果として、成長の大幅な減速や失業率の上昇、所得の低下、不確実性の拡大が生じ、それによって深刻な不況が引き起こされます。重大な危機の場合は、公的債務の不履行や再編が避けられなくなる可能性もあります。

 

IMFによる融資がどう役立つか

IMF融資は、経済の安定と持続可能な成長に必要な条件を国々が整えなおせるよう、調整政策の秩序ある実施のために余裕を確保することを目的としています。実施すべき政策は国の状況によって異なり、例えば、主要輸出品価格が急落した場合には、経済を強化し輸出基盤を拡大するための措置を実施する間、融資による支援を必要とする国も出てくるでしょう。また、深刻な資本流出に悩む国は、投資家の信用を失う原因となった問題に取り組む必要があるかもしれません。この原因としては、金利が低すぎる、財政赤字と債務残高が急激に膨張している、銀行システムが非効率的であるか十分に規制されていないといった問題が考えられます。

IMFの融資を受けなければ、これらの国々の調整プロセスはより急で困難なものとなる可能性があります。例えば、投資家が新たな資金提供を望まない場合、国はそれに適応する以外に選択の余地はありませんが、そのために政府支出や輸入、経済活動が厳しく圧迫されることが少なくありません。IMFの融資制度は、より段階的で、かつ、入念に検討された調整を実施する助けとなります。通常、IMF融資には一連の是正政策処置が伴うことから、適切な政策が実施されているという印にもなります。

IMFの様々な融資方法は、異なるタイプの国際収支上のニーズと、多様な加盟国それぞれに特有の状況に合わせて策定されています(表を参照)。IMF加盟国はどの国もIMFの一般資金勘定(GRA)の資金を非譲許的な条件で利用する資格を持っています。その一方で、IMFは貧困削減・成長トラスト(PRGT)の下で譲許的な融資(現在、20216月末までゼロ金利)による支援も行っています(「IMFの低所得国向け支援」参照)。このトラストは低所得国の多様性とニーズに一層沿う形で工夫された制度です。従来、危機に直面している新興市場国や先進国に対してはIMF支援の大半が、短期的または潜在的な国際収支上の問題への対処を目的としたスタンドバイ取極(SBAを通して行われています。スタンドバイ・クレジット・ファシリティ(SCFは、低所得国を対象に、同様の目的で適用されます。拡大信用供与措置(EFFと、それに相当する低所得国向けの拡大クレジット・ファシリティ(ECFは、国際収支上の問題が長期化している国々を中期的に支援するためにIMFが主に用いる制度です。この制度の利用は世界金融危機以降に大幅に増加しており、一部の加盟国が抱える国際収支上の問題の構造的な性質を反映しています。

すでに強力な政策を実施している加盟国は、リスクが高まった時期に危機の予防や緩和を支え、市場の信頼を強化するために、フレキシブル・クレジットライン(FCLまたは予防的流動性枠(PLLを活用することができます。

ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFIと、それに相当する低所得国向けのラピッド・クレジット・ファシリティ(RCFは、コモディティ価格ショックから自然災害、国内の脆弱性に至るまで、国際収支に緊急のニーズが生じた国に対して迅速な支援を行います。

各国の異なる状況を反映して、一般資金勘定によるプログラムはプログラム期間中にプログラム利用国の国際収支上の問題を解決することが期待されています。一方で貧困削減・成長トラストのプログラムは国際収支上の問題の解決についてより長期的な期間を想定しています。

IMF融資のプロセス

IMFは、コロナウイルス危機対策として、最も脆弱な人々を守り、経済回復の基盤を築くためなど、異例の規模の融資支援を前例なきスピードで進めました。IMFの新型コロナウイルス対応の詳細はこちらからご確認ください。

IMFは加盟国からの要請を受け、国際収支上のニーズに対して融資による支援を提供します。開発銀行とは異なり、IMFは特定のプロジェクトに対する融資は行いません。要請に基づき、IMF職員のチームは当該国の政府と協議を行い、経済や財政の状況とその国の総合的な資金需要の規模を評価した上で、適切な政策対応に合意します。

ある国に対してIMFが融資を行う際には通常、事前にその国の政府とIMFが経済政策プログラムについて合意する必要があります。政策コンディショナリティと呼ばれる、政府による一定の政策措置を遂行する約束は、ほとんどの場合IMF融資の不可欠な要素となっています(表を参照)。取極の基盤となる政策プログラムは大半の場合、「レター・オブ・インテント(趣意書)」の形でIMF理事会に提出され、「覚書」に詳細が記されます。

通常、政策措置遂行のモニタリングを通じて、進捗が審査されます。しかし、対象国がすでに健全な政策の実行を明確に確約している場合(FCLPLL)や、ショックが一時的または小規模であるなどの理由から、当面の緊急ニーズに応えるための取極である場合、または、脆弱性が原因であるケースも含め、政策遂行能力が限られている場合(RFIRCF)などには、一部の取極においてIMF資金をコンディショナリティなし、または、わずかなコンディショナリティで利用できます。対象国の経済と財政が健全な状態に回復すれば、IMF資金は確実に返済され、他の加盟国がその資金を利用できるようになります。

政策と融資パッケージについて合意に至った時点で、IMF理事会に対して対象国の政策意図を支持し、IMF資金へのアクセスを提供するよう勧告が出されます。IMF緊急融資メカニズムにおいては、このプロセスが迅速化されることがあります。

 

**注:PSIPCIは資金支援を伴いませんが、PSIPRGT制度のひとつであり、PCIPRGTGRAの両方に適用されます。

IMFの各国との融資取極についてはこちらから情報をご確認ください。

各国の政策プログラムを支援するために提供された資金支援について毎週更新されている概要はこちらからご確認ください。