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写真:Gopixa/iStock by Getty Images

IMF サーベイ・マガジン : 新興市場国が国際金融システムに及ぼす影響

2016年4月4日

  • 国際的な資産価格の動向は新興国における金融動向に左右されることが多くなっている
  • こうした変化は金融市場の国際的統合が主な原因である
  • 政策当局は新興国の経済動向と政策動向に留意しなければならない

際通貨基金(IMF)の新たな調査研究によれば、国際的な株価と為替レートの変動の三割以上が新興国の資産価格変動の影響を受けたものである。

サンパウロ証券取引所のトレーダー:国際金融市場への統合がより進んだ新興市場国は世界経済に大きな影響を及ぼす(写真: Sebastiao Moreira/epa/Corbis)

サンパウロ証券取引所のトレーダー:国際金融市場への統合がより進んだ新興市場国は世界経済に大きな影響を及ぼす(写真: Sebastiao Moreira/epa/Corbis)

国際金融安定性報告書

IMFによれば、新興国市場の他市場への影響の高まりは、新興国の世界GDPや貿易におけるシェアの上昇よりもむしろ新興国の国際金融市場への統合の深まりに伴うものである。この分析結果は今般、国際金融安定性報告書で公表された。例えば、中国経済に関するニュースは世界の株価収益率に影響を与えはするが、より国際金融市場との統合が進んでいるブラジル、メキシコや南アフリカに比べ、中国内における資産価格のショックが他市場に伝搬する程度は小さい。世界的に見ると、債務を多く抱える企業の株価ほど外的なショックに影響されやすい。

金融統合と金融要因の影響

新興国市場の国際金融市場への統合は国際金融市場全体にとってプラスとマイナスの両面の効果を生む。プラス面としては資産価格形成と資源配分の効率性を向上させる反面、マイナス面としてはショックを増幅させ金融市場の過剰な変動が他市場に伝搬しやすくなることがあげられる。

IMFによれば、新興国市場からの金融的な波及が強まっている背景には、金融統合の深化に関連した二つの要因がある。一つには、債務を多く抱え、流動性が低い産業部門が影響を受ける程度が強いことである。二つ目には、大規模な金融機関を有する新興国の他国に及ぼす影響が相対的に大きい点である。同時に後者の国では他の新興国からの金融的なショックをうまく吸収できる傾向にある。
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投資信託による国際投資に伴う資本移動が顕著に拡大した結果、新興市場国からの金融面での他国への波及の規模と態様が変化してきている。特定国での損失や顧客による引き出しに対応するために、複数の国から投資信託が投資を同時に引き揚げる事象はポートフォリオ経路を通じた伝搬として知られている。新興国への投資の割合が高まるにつれ、新興国から他国の株式市場への金融的な波及経路として、この経路の重要性は増している。とは言え、IMFによれば、先進国を起点とするポートフォリオ経路を通じたショックの伝搬のほうが、新興国を起点とするものより依然はるかに大きい。

中国からの金融面での波及はより重要になる

IMFの分析によれば、大規模な新興国の中でも中国は特殊な位置を占める。中国の経済成長に関するニュースは世界の株価に対して経済的に有意な影響を与えており、しかもその影響は増大している。過去5年だけで見ても、中国の経済成長に関する新たなニュースが世界の株価に与える影響はほぼ四倍になった。これに対し、中国内の資産価格の変動は他市場の資産価格にほとんど影響を与えていない。

「中国を起点とする純粋に金融面での波及は現在のところ極めて小さいが、中国が徐々に国際金融システムと統合していくにつれ、今後相当大きくなっていくことが見込まれる」と、IMFのGaston Gelos 国際金融安定分析課長は述べている。

政策協調と監視の強化の必要性

IMFは、金融システムの安定化を確保するため、各国政策当局はこうした変化に対応した行動を取るべきとしている。

「政策当局が自国の状況を検討する際には、新興市場国の経済動向と政策動向を考慮する必要があることを我々の分析は示している。」(Gelos課長)

経済政策とマクロプルーデンス面での国際的な政策協調の強化も重要な役割を果たしうる。

各国がとるべき政策対応としては、以下があげられる。

• 新興市場国では、政策当局は国内投資家層を育成することで国際的なショックの金融的な波及の影響を緩和することが出来る。

• 中国の国際金融システムにおける重要性が高まるのに伴い、中国当局が自らの政策決定をより明確かつ迅速に対外的に発信し、政策意図の透明性を高め、目標に沿った戦略を構築することがますます重要になってくる。

• 新興国のショックの他市場への金融面での波及が増幅される一因が過剰な企業債務であることに鑑みると、当局は金融面での安定を損なう恐れのあるような企業債務の過度の拡大を抑制する政策を採用すべきである。投資信託に起因するシステム的なリスクを抑えるためのルールの改善も引き続き重要な課題である。

• 最後に、銀行、投資信託及び大規模な機関投資家が仲介する国際的な資金フローに関するデータを充実させることも優先課題である。

IMFは4月13日に国際金融安定性報告書の残りの調査研究成果を公表する予定である。