分断を克服し、回復の障害を取り除く
IMF News, October 5, 2021
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- Published: October 5, 2021
1. はじめに
- 発言者: クリスタリナ・ゲオルギエバ
- 場所・日付: ワシントン DC、2021年10月5日
- 要旨:
- ワクチンと政策支援によりこの10か月で何百万人もの命が救われ、危機から復興へ前進した一方で、回復は停滞しており「靴に石が入った」ような障害が残っている。
- 最も差し迫った障害はワクチン接種をめぐる分断であり、各国間で回復支援や未来への投資能力にも深い分断がある。
- 協力により分断を克服すれば、より力強い回復とパンデミック後のより良い世界が可能。
2. 世界の見通し―格差拡大、インフレ、債務(主要な「石」)
- 世界成長見通し:
- 2021年の世界の成長率を「7月に私たちは2021年の世界の成長率を6%と予測」したが、現時点では今年の成長は若干減速すると見込まれている。
- 格差拡大(成長の地域差):
- 米国と中国は依然として成長の重要な原動力。
- 先進国では、2022年までに経済産出量がパンデミック前のトレンドに戻ると予測されるが、大半の新興市場国と発展途上国では回復までに何年もかかる見込み。
- 回復の遅れは若年層、女性、非公式労働者に特に大きな打撃。
- インフレ:
- 一部の国で総合インフレ率が急上昇しているが影響は国によって差がある。
- 「大半の国で2022年中には物価上昇圧力が鎮静化すると見込んでいますが、一部の新興市場国と発展途上国では物価上昇圧力が持続すると予想されています。」
- 世界的な食料価格は「この1年で30%以上上昇しています。」エネルギー価格上昇と合わせて貧困世帯を圧迫。
- インフレ期待が持続的に上昇すれば金利が急騰し金融環境が急引き締まる可能性があり、特に債務水準が高い国にとって深刻な影響。
- 債務:
- 「世界の公的債務が対GDP比で100%近くまで増加した」とのIMF新たな試算(2020年末まで)。
- 多くの発展途上国は危機前から財政余力が乏しく、現在は予算余力がさらに限られ、新規債務を好条件で発行する能力も限定的。
- これにより、債務と資金調達面で不利な状況に置かれている国がある。
3. 強力な政策行動―ワクチン接種、精度向上、加速(政策の3本柱)
- 全世界でワクチン接種を進める(ワクチン接種)
- 目標(IMF、世界銀行、WHO、WTOの共同目標):
- 「今年末までにすべての国で40%以上の人に、2022年前半までに70%の人にワクチンを接種するという目標はまだ達成可能」
- 必要措置(列挙):
- 発展途上国へのワクチン供給を大幅に増加させる。
- 富裕国は寄付の約束を直ちに果たす。
- ワクチン生産・流通能力を強化し、医療用品に関する貿易制限を撤廃する。
- ワクチンだけでなく検査・追跡・治療薬のために不足している「200億ドルの無償資金」を補う。
- 影響見積り:
- 上記が行われなければ「世界GDPの損失は今後5年間で5.3兆ドルに上る可能性があります。」
- 政策の精度向上(精度)
- 中央銀行は基調的な物価動向が明らかになるまで一過性のインフレを容認できるが、回復が速い場合やインフレ期待の高まりが現れた場合には迅速に行動する必要がある。
- すでにインフレ期待と持続的物価上昇圧力に直面している国は引き締めを余儀なくされている。
- 金融リスク(資産価格の過熱等)の監視が各国で重要。
- 財政面では、短期的支援と中期的債務削減をバランスさせる健全な中期的枠組みと政策の信頼性が必要。
- 低所得国には「より多くの歳入とより多くの譲許的融資、そして債務問題に対処する上でのより多くの支援」を確保する必要。
- 改革の加速(加速)
- 優先課題: 気候変動、技術革新、包摂性。
- 気候関連:
- 「炭素にしっかりと価格を付け」、今後20年間でグリーン投資を大幅に拡大し、脆弱層と脆弱国への支援を行う。
- グリーン移行が成功すれば「今後10年間で世界GDPを約2%押し上げ、3000万人の新規雇用を創出できる可能性」。
- 民間資金の動員にはデータ・情報開示・タクソノミーの改善を含む国際的取り組みが必要。
- デジタル革命:
- デジタルインフラ投資、教育・健康・基礎研究への投資が生産性と包摂性を高める。
- 中央銀行発行のデジタル通貨はクロスボーダー決済の時間短縮とコスト削減に寄与する可能性がある(新しい試験スキームの結果)。
- 税制:
- 変革を促進する投資のための歳入確保には「法人税の国際的な最低税率に関する合意を完成させ」る必要。
4. IMFの対応と資金面の取り組み
- IMFの支援実績(公表された数値):
- 「87か国を対象とした総額1180億ドルの新規融資や、最も貧しい加盟国に対する債務救済」を実施。
- 加盟国の総意により「8月には6500億ドルの特別引出権(SDR)の新規配分」実施。この配分はIMF史上最大。
- この配分のうち「約2750億ドルは新興市場国と発展途上国に割り当てました。」
- SDRの活用と提案:
- SDR保有により自国の公的準備資産が増え、信頼を高め、借入コストを引き下げる効果。
- 既にSDRを利用・活用予定の例:
- ネパール: ワクチンの輸入に充当。
- 北マケドニア: 医療支出とパンデミック関連のライフラインに活用。
- セネガル: ワクチン生産能力の強化に充当。
- ハイチ: 必要不可欠な輸入に役立てられる予定。
- 政策提案(IMFからの呼びかけ):
- 対外ポジションが強固な国に対してSDRを自主的に振り向けるよう呼びかけている。
- 新規SDRをPRGT(貧困削減・成長トラスト)に拠出し低所得国にゼロ金利融資を提供する能力を強化する。
- SDRを活用して「強靭性・持続可能性トラスト」を新設することについて加盟国と協議中。
- 期待効果:
- 新規のSDRを最大限に活用することは「世界の景気回復にとっても、各国にとっても、人々にとっても役に立つ」こと。
5. 終わりに(メッセージ)
- 個人的所感:
- 若者や学生に対する期待と希望を表明し、ボッコーニ大学が議論にふさわしい場であると強調。
- 協力と若者のエネルギー・学ぶ賢さを活かして「靴の中の石」を取り除き、すべての人にとってより良い未来へ歩むことを訴える。
出典: 分断を克服し、回復の障害を取り除く — クリスタリナ・ゲオルギエバ, ワシントン DC, 2021年10月5日