なぜ、どのように経済学を変えなければならないか
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- Authors: Jayati Ghosh
- Published: March 12, 2024
概要
- 著者: ジャヤティ・ゴーシュ(マサチューセッツ大学アマースト校 経済学教授)
- 発行: 2024年3月
- 要旨: 経済学は、謙虚さ、歴史の理解、そして多様性を取り入れる抜本的な変革を必要としている。主流派経済学が依拠する仮定や力学が現実の複雑さや権力不均衡、環境的制約を覆い隠しており、このままでは有効な政策設計が阻害される。
主な発見
- 世界経済の現状
- パンデミック前から世界経済は低迷し脆弱であった。
- パンデミック後の景気回復期において、所得や資産だけでなく人間の基本的なニーズへのアクセスにおける格差が深刻で一段と悪化している。
- 社会政治的な緊張と地政学的な対立が生じ、社会が機能不全に陥る恐れがある。
- 主流派経済学の問題点
- 金融市場の「効率性」、財政政策の分配効果、労働市場規制緩和の雇用影響、国際貿易と投資の影響、税制優遇や補助金の効果、グローバル・バリュー・チェーンの影響、生態学的打撃、知的財産権の必要性など、多くの重要問題について誤解や半真実が流布されている。
- 経済学が権力の概念を排除することで、既存の権力構造と不均衡を強化している。具体例として、労働者に対する資本家の優位、持続不可能な自然の搾取、階級に基づく労働市場の細分化、私的な市場支配とレントシーキング、政治権力の経済的利用、財政・金融政策の分配効果の無視などが挙げられる。
- GDPを進展の尺度として利用する慣行は、概念的および方法論的欠陥があるにもかかわらず続いている。
- 仮定と方法論の問題
- 完全競争、規模に関する収穫不変、完全雇用といった新古典派の仮定がモデルに根強く残り、特に発展途上国での政策の基盤になっている。
- トップジャーナルの支配や雇用インセンティブが、経済学者を実質的な現実分析から逸らし、数学的に扱いやすいが現実を反映しないモデル中心の研究を促進している。
- モデル化困難な要素や不都合な真実は「外部性」として扱われ、排除されがちである。
- 階層・差別・知の偏在
- 学内の権力階層が代替的理論の出現を抑制し、性別、人種/民族、地域に基づく差別と結びついて視点を排除または過小評価している。
- 主流派経済学は北大西洋(特にアメリカとヨーロッパ)に支配され、その他地域の経済学者の知見や貢献は大方無視される傾向がある。
- 歴史や社会的文脈の軽視が目立ち、行動経済学やナッジの台頭にもかかわらず、文脈を無視した手法が適用されることがある。
- 開発経済学でのランダム化試験の人気は、マクロ経済的進化や文脈を消し去るミクロ志向の傾向と関連している。
- 理論的自己批判の欠如
- 多くの現代の経済学者が自身の方法論的基盤を哲学的に評価することを行っていない。
政策的含意・提言
- 主流派経済学の姿勢転換
- 経済学はより謙虚な姿勢を取り入れるべきである。
- 歴史を認識し、権力が不平等であることを明示的に認めるべきである。
- 多様性を積極的に奨励し、北大西洋中心の知の支配を是正するべきである。
- 研究・教育の方向性
- 数学的に扱いやすさを優先するモデル偏重から脱却し、現実の複雑さ、歴史、社会、政治の影響を反映する研究を重視すること。
- トップジャーナルや学術的雇用のインセンティブ構造が生み出す偏向を是正し、代替的視点や方法論を評価・支援する制度的枠組みを導入すること。
- 政策設計への反映
- 財政・金融政策、労働政策、貿易・産業政策、知的財産権政策などにおいて、分配的影響、権力構造、環境負荷を評価に組み込むこと。
- GDP依存の評価指標に替わる、より包括的な進展・福祉の指標の採用を検討すること。
結論
- 経済学は現在の欠陥のために貧しくなっており、広範な世界での信頼性と正当性を失っている。
- 現代の主要な課題に対処するために、学問としての方向性・方法論・制度的構造を明確に変える必要がある。
出典: ジャヤティ・ゴーシュ, ファイナンス&ディベロップメント, 2024年3月