アジアにおける通貨の実利的な転換
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- Authors: DONG HE
- Published: September 24, 2026
概要
- 多様化とデジタル化が金融の未来を再構築しているという観点から、アジアの主要国は国際貿易における80年にわたる米ドルとの関係から徐々に離れつつあると論じられている。
- この変化を後押しする主な力はふたつ:地政学的・地経学的分断に伴う経済効率と国家安全保障・戦略的頑健性のトレードオフ、そして通貨や金融ネットワーク間で直接取引を行うコストを下げるデジタルイノベーション。
ドルの現状と優位性
- 歴史的背景:第二次世界大戦以降、ドルはアジアの支配的な国際通貨であると説明。
- ASEAN+3(日中韓を含む)の現状統計:
- 貿易取引請求額の80%超がドル建て。
- 為替決済の85%近くがドル建て。
- 域内銀行の国境を越えた資産および負債の「半数以上」がドル建て。
- 外貨準備高の「約3分の2」がドル建て。
- ドルの優位性は、米国の開かれた経済性、時間をかけて形成された米国の制度への信頼、米国の金融市場の厚み、独立した中央銀行といった要素に依存。
- ただし、米国の政策や制度における緊張は、ドルの中心的役割の基盤を試す可能性がある。市場は、不確実性が米国外で生じた場合はドル建て資産へ安全性を求める一方で、米国自身の安定性に疑問が生じればドルへの信頼に懸念が出ると指摘。
アジアにおける地域的転換(構造変化と影響)
- 過去20年での構造変化:
- 20年前、ASEAN+3全体の付加価値輸出の「ほぼ3分の1」は米国向けだったが、今日ではその割合は「5分の1」に減少。
- 中国とASEANは現在、それぞれがアジアの生産量の「10分の1」を吸収しており、20年前の「6%」から増加。
- 結果として「工場アジア」はより高度に集積し、地域内のつながりが強化されている。
- AMROの解析的モデリングは、現在では同地域の内需の変化の方が、米国発の需要ショックよりも近隣諸国に強い影響を与えることを示唆。
- 影響:アジアの金融政策は世界的要因に依存し続けるものの、ASEAN+3諸国の金融状況が次第に国内主導になっている初期的兆候がある。
- 多様化の必要性:貿易における地域通貨の利用拡大は、国内の信用状況と米国の金融政策との関連性を弱め、構造的通貨ミスマッチの解消と中央銀行が国内状況に即した金融政策を行える環境を促進する。
国際決済のリワイヤリング(インフラと協力)
- アジアは欧州型通貨同盟を追求しなかった理由として、政治体制、経済構造、所得水準、金融市場の成熟度の多様性を挙げる。
- 実利的方向への移行:金融統合とセーフティーネット強化、国境を越えた決済インフラの近代化が中心。
- 中央銀行主導の現地通貨決済枠組み:
- 過去10年で多数の二国間現地通貨決済協定が開発・運用されているが規模はまだ小さい。
- リテール分野の連携:
- 相互運用可能なQRコードを用いた高速決済システムを統合し、消費者・観光客・企業が自国通貨で迅速かつ安価に海外送金可能に。
- シンガポールのPayNowとタイのPromptPay間の連携が代表例。
- Project Nexusなど多国間イニシアチブによって拡大中。
- 中国の役割:
- 人民元は変化の最前線。中国人民銀行の人民元国際決済システム(CIPS)の拡充とデジタル人民元導入、国債市場への海外アクセス拡大やソブリン資産プール拡大への投資を通じ、人民元の国際利用拡大を支援。
デジタルファイナンスの将来性(ホールセール化とトークン化)
- リテールでの成果をホールセール金融システムへ拡大する取り組みが進行中。
- 具体的プロジェクト例:
- Project mBridge:中央銀行デジタル通貨でホールセール取引を行うための分散型台帳共有プラットフォームで、中国、香港特別行政区、タイ、アラブ首長国連邦の中央銀行を結ぶ。
- Project Guardian:シンガポール金融庁が調整し、トークン化された資産とオープンなデジタルインフラを探る。
- トークン化の効果:
- 金、ドル、株式など多様な資産をデジタル「トークン」に変換し、コンピュータが認識して転送可能にすることで、従来のように2通貨間の取引がドルを介する必要性を減少させうる。
- トークン化されたプラットフォームは直接的な流動性を高め、異なるタイムゾーンで営業する銀行の参加を広げ、中継銀行の必要性を削減する可能性。
- アトミック決済のような仕組みにより、決済リスクを低減して外国為替市場の流動性を向上させる潜在力がある。
- 課題:
- 相互運用可能なデジタル金融インフラの構築、規制基準と国境を越えたコンプライアンス規則の調和が必要。
- 多くの新興国や発展途上国の通貨は既存の仕組みから除外されている点への対応が求められる。
頑健性の構築と政策的含意
- 出現する金融アーキテクチャーは多層的であり、技術革新と制度のバランスを取りつつ経済効率と頑健性を同時に高めていると評価。
- 主要な特徴と含意:
- ドルは当面の間、グローバル金融市場や大規模国際取引における流動性のバックストップとして残存する可能性が高い。
- 地域プラットフォーム(現地通貨決済、QRコード高速決済、デジタル通貨実験など)は、ドル基盤のシステムと併存しつつ、サプライチェーンにおける貿易と投資を促進する役割を果たす。
- 成功の条件は、技術革新だけでなく、安定した金融システムを支える制度に対する信頼、政策の信用性、および国際的な協力の維持に依存。
- 実務的政策方向(原文の立場に基づく要点):
- 貿易・決済の代替ルートを作る実利的多様化を追求すること。
- 国境を越えた決済インフラの接続性拡大、トークン化やデジタルプラットフォームの進展を通じた直接的通貨取引の促進。
- 規制基準と国際コンプライアンスの調和を進め、相互運用性の確立を図ること。
出典: ドン・へー、2026年9月、ファイナンス&ディベロップメント - セレクト記事