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日本経済は堅調だが、強靭性が試される-IMF専務理事、対日経済審査で訪日

[2019年11月25日、東京] 就任後初来日した国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は今日、日本経済は堅調で強靭性があるが、世界的な景気の同時減速と自国の人口動態の課題により、中期的にはその強靭性が試されるだろうと指摘しました。

10月にIMF専務理事に就任したゲオルギエバは今回、対日年次経済審査訪問(いわゆる対日4条協議ミッション)を終了させるために東京を訪問。同専務理事の来日前には、IMFのエコノミスト・チームが、日本政府関係者、民間部門やシンクタンクの代表者らと2週間に渡って協議し、経済状況の評価とリスクの特定を行い、課題に対応するための政策提言を行いました。

滞在中、同専務理事は安倍晋三首相と会談し、麻生太郎副首相や日本銀行の黒田東彦総裁らと協議を行いました。

今年のミッションを締めくくる記者会見で、同専務理事は「今般の日本経済のパフォーマンスは堅調で、経済は強靭性を維持すると予測されます」と発言。さらに現在の政策の下では、日本経済は2019年に0.8%、2020年に0.5%成長する見込みだと付け加えました。同専務理事はまた、キャッシュレス取引の還元事業を含む政府の対策により、10月の消費税増税が円滑に実施されたことに留意しました。

しかし、同専務理事は日本の強靭性を注視する必要があると指摘。「日本の強靭性は今後、最も直近では世界景気の同時減速、中期的には世界経済の不確実性と自国の人口動態の動向によって試されることになるでしょう」と語りました。

急速な高齢化と人口および労働力の縮小による日本の人口動態の変化は、リスクを高め、日本の実質成長を鈍化させる可能性があります。同専務理事は、構造改革、特に労働市場改革がこうした人口動態の逆風に対処するために不可欠であると述べました。日本は、改革によってもたらされた女性と高齢者の労働参加といった成果を確固たるものにする必要があるとし、「次に求められるのは、女性が活躍するための、より多くの研修やキャリアアップの機会」で、これにより一層多くの女性プロフェッショナルが「権力の回廊」に達することができるだろうと語りました。

同専務理事はまた、メディアから「2019年対日4条協議終了にあたっての声明」に記載された、消費税を2030年までに15%、2050年までに20%に引き上げることを推奨するIMFの提言について質問が出ると、消費税の「段階的な増加」が日本財政の持続可能性の達成を助けることになると述べました。「国際通貨基金の観点からすると、そして他国の実践に鑑みても、私たちは徐々に、直ぐにではなく時間をかけて、もっと消費税に頼る余地があると思っています」と答えました。

同専務理事がIMF加盟国に対する年次経済審査ミッションに参加したのは今回が初。日本に対する政策提言を伴う最終報告書は、今後、日本チームにより作成され、IMF理事会による審査を経て数か月以内に発表されます。

日本滞在中、同専務理事は公式会談に臨んだだけではなく、日本についてさらに学ぶために二つの場所を視察しました。

一つ目は、「地下神殿」として知られる埼玉県の世界最大級の地下放水路。この地下放水路は、洪水を効果的に制御し、直近の台風19号を含む自然災害の被害を軽減してきました。同専務理事は、施設の建設に2,300億円の費用がかかった一方で、2006年の操業開始以来、同施設が約1,484億円の損害を防いできたという点に関心を寄せました。

現地で国土交通省の職員による説明を聞いた後、同専務理事は「IMFは、財政政策を使って、より頻発する破滅的な気象事象に対する強靭性を高める方法を加盟国に助言しています。その分野では、日本は世界的なリーダーです。私たちはあなたたちから学び、この知識を他の国に伝える必要があります」と語りました。

次に、同専務理事は東京のロボット自動化を専門とするスタートアップ会社・MUJINを訪問し、自動化がいかに日本の人口動態問題や労働力の減少に対処できるか議論を交わしました。

来日中、同専務理事はまた、日本-IMFアジア奨学金プログラム(JISPA)のもと、日本の大学院で学んでいるアジア太平洋地域諸国の若手行政官と時間を過ごしました。同プログラムは、東京のIMFアジア太平洋地域事務所の主要な活動の1つであり、1993年以来、23か国から740名近くの卒業生を輩出しています。卒業生の多くは、自国の財務省や中央銀行で要職に就いています。

現役の約50名のJISPA奨学生との対話集会では、同専務理事は世界経済の課題に対する見解を述べ、新興市場国の教授としてキャリアをスタートさせ国際機関のトップに至るまでの自分の経験を共有した後、最後に奨学生らと自撮り写真を撮影しました。

同専務理事は「JISPAのようなプログラムは、異なる国、異なる文化、異なる視点の人々が共に学び、地球市民になるために非常に重要です」と奨学生たちに語りかけ、この学びが将来的にはIMFが推進する多国間主義を強化することになるだろうと付け加えました。

公式行事を精力的にこなしたゲオルギエバ専務理事。彼女らしいリーダーシップスタイルでIMFの新たな印象を様々な聴衆に残してゆきました。