財政モニター

人々の再起を支援する

2022年10月

概要

財政モニター 2022年10月

現下の動向

多くの国で、10 年以上にわたって続いたインフレの低迷と低金利に取って代わり、インフレ が進行し金利が上昇している。景気後退の懸念が浮上しているほか、ロシアによるウクライナ 侵攻が続く中で地政学的な緊張がさらに高まっている(2022 年 10 月「世界経済見通し (WEO)」)。新型コロナウイルスのパンデミックへの対応によって財政余地が枯渇した高債 務国を中心に、財政政策のトレードオフがますます困難になっている。家計は食料・エネル ギー価格の上昇と格闘しており、社会不安のリスクが高まっている。

分析章

第1章: 人々の再起を支援する

状況が変わったことにより予算が圧迫

2021年から 2022 年にかけて、財政赤字は先進国と新興市場国で大幅に減少したものの、依 然として各所得グループでパンデミック前の水準を上回っている(図 ES.1)。先進国と新興市 場国(中国を除く)では、財政赤字の平均値が顕著に下がっているが、これはパンデミック関 連措置の終了とインフレの進行を反映している。さらに、石油輸出国の多くは、石油収入の増 加を理由に、今では財政黒字を計上している。反対に、中国では、成長が減速し物価上昇率が 低いまま推移する中で2022年に赤字が拡大すると予測されている。低所得途上国に関しては、 パンデミックに対する財政対応が相対的に少なかったため、財政赤字の平均はほとんど変化し ていない。2019 年と比較した財政赤字の拡大は、先進国と低所得途上国では(食料・エネル ギー危機への対応などもあって)3 年前に比べて支出が増えていることが理由であるのに対し て、新興市場国では歳入がまだ回復していないことが主な理由となっている。