危機と金融政策
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- Authors: GITA GOPINATH
- Published: March 13, 2023
概要
- 著者: ギータ・ゴピナート
- 掲載: ファイナンス&ディベロップメント - セレクト記事
- 日付: 2023年3月
- 主題: パンデミックとロシアのウクライナ侵攻に伴う供給ショックがもたらした世界的なインフレ率高騰と、それが中央銀行の金融政策に投げかける教訓・課題。
インフレ率高騰の理由(主要所見)
- 世界のインフレ率高騰は、パンデミックとロシアのウクライナ侵攻が重なった異例のタイミングで発生した。
- 事前の実証的エビデンスは極めてフラットなフィリップス曲線(失業率低下がインフレに僅かしか影響しない)を示していたため、多くのモデルはパンデミック後のインフレ急騰を過小予測した。
- 予測誤差の要因として次を指摘:
- 雇用回復の「スピード効果」がインフレを後押しした可能性。
- フィリップス曲線に非線形性が存在し、経済が過熱状態にある場合には賃金・物価圧力が一層深刻となる可能性。
- サービス供給制約の下で大規模な景気刺激の資金がモノ需要に流入し、部門レベル・全体レベルで生産能力制約が露呈したこと。
金融政策の教訓(分析と含意)
- 必要性:
- モノとサービスを区別する部門別総供給モデルの整備。
- 部門別の供給能力制約を織り込み、スピード効果や非線形性を勘案することが有益。
- 見直しが必要な従来の処方箋:
- パンデミック以前に支持された「自然水準を大きく下回る失業率を容認・奨励する」考え方は再検討が必要。
- 測定誤差が重大化し得る状況(失業率が不確実な自然水準を下回り、フィリップス曲線が非線形である場合)では、政策当局は誤って経済を過熱させ、インフレ急騰を招くリスクがある。
- 中央銀行の対応示唆:
- 既に高インフレ状態で追加ショックが物価期待を不安定化する恐れがある場合、供給ショックを「一時的」と無視することは適切でない可能性がある。
- 生産者がコスト上昇を容易に転嫁し、労働者が実質賃金低下を受け入れにくい好景気下やショックが広範囲に及ぶ場合には、中央銀行はより力強い対応が必要となる。
長期化のリスク(シナリオと影響)
- リスク要因:
- インフレ期待の不安定化は主要なリスクであり、金融政策のトレードオフを複雑化する。
- 貿易障壁の拡大や世界サプライチェーンの慢性的混乱がさらに進む可能性。
- 新興市場国への影響:
- 貿易の分断化とインフレ期待の不安定化が進行すれば、新興市場国の中央銀行は特に損害を被る。これらの国は外的ショックへの脆弱性が高く、より厳しい政策トレードオフに直面する懸念がある。
- 均衡実質金利への影響:
- パンデミックと戦争は均衡実質金利に影響を与え得る(安全資産需要の増大、格差拡大、人口・生産性・公共投資・公的債務等を通じて)。
- 全体としては均衡金利は低水準に留まると考えられるが、不確実性が残る。赤字財政支出への長期的転換や気候投資の大規模な追い上げにより、均衡金利が大幅に上昇する可能性もある。
政策的な意味合い(提言・政策手段)
- 中央銀行の役割:
- インフレとの闘いを主導するのは中央銀行であるべきであり、インフレが目標へ回帰する持続的な兆候を確認するまで、緊縮的な金融政策を維持する必要がある。
- 物価安定性の回復なくして持続的な経済成長は不可能である。
- 他の政策の役割:
- 財政政策は、経済を刺激しない形で最も脆弱な人々に的を絞った支援を実施することが重要。
- 気候変動への取り組みを前進させ、経済・金融安定性の維持に努めるべきである。
- 世界貿易の分断リスクを低減する政策は、供給ショックのリスクを緩和し、世界の潜在GDPを押し上げることに寄与する。
ギータ・ゴピナート、ファイナンス&ディベロップメント、2023年3月