2020年10月版「国際金融安定性報告書」のポイント
第2章のポイント
第2章 要旨
強力な各種政策により流動性の問題が緩和
新型コロナウイルスのパンデミックによって非金融法人企業部門のキャッシュフローが悪化し、企業は流動性の不足と倒産の可能性増大に直面した。G7諸国では3月に始まり第2四半期を通じ企業部門の借入れが大幅に増加した。これを支えたのが既存の与信枠の活用と異例の政策的支援である。この借入れで、企業はキャッシュフローの減少と不確実性の増大を乗り切るための余裕資金を積み上げることが出来た。米国では3月末以降、社債市場が好調を持続しているが、銀行融資やシンジケート・ローン市場では与信環境がタイト化している。他のG7諸国では第2四半期を通じて与信環境はすべての市場で若干緩和した。もっとも危機の初期には、一部の国で、コロナ前から既に資金繰りや自己資本に脆弱性を抱えていた上場企業や規模の小さい上場企業が財務面での困難にさらされた。こうしたストレスは6月末時点でも一部には残っており、仏、英、米の株式市場ではコロナ前から脆弱性を抱えていた企業の株価の回復率は、市場平均を4から10ポイント下回っている。政策支援、とくに企業部門に直接働きかける政策介入は、総体としてみれば効果をあげた。ただし先行きは、支援策の縮減を急ぎすぎると非金融法人企業部門の資金ニーズを満たすというこれまでの成果を失うおそれがあるため、留意が必要である。第3章 要旨
第4章のポイント
第4章 要旨
新型コロナ危機と企業の環境パフォーマンス
新型コロナ危機に伴う経済の封鎖は地球規模での二酸化炭素の排出量を一時的に減少させたが、パンデミックが低炭素社会への移行にどのような長期的影響を及ぼすかについてはまだはっきりしない。危機に伴う経済の悪化によって企業のグリーンプロジェクトへの投資が困難になり、低炭素社会への移行が遅れる可能性がある一方で、危機を通じて消費者や企業がより環境に優しい製品を好むようになり、この構造的な変化が化石燃料依存からの脱却を促す政策導入の好機となる可能性もある。しかし金融、経済にストレスがかかった過去のケースを分析すると、金融面の制約が増したり経済条件が悪化したりした場合、一般的には企業の環境面でのパフォーマンスが低下し、グリーン投資が減少し、こうした面で数年分の後退が起こっていることがわかった。この分析はコロナ危機によって低炭素社会への移行が遅れる可能性を示唆している。また、地球規模での温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題であることから、グリーンリカバリーを支えエネルギー源の転換を促す気候変動政策とグリーン投資支援がいかに重要であるかを示している。透明性向上と標準化推進などを通じサステナブル・ファイナンスを政策的に支援することが、グリーン投資を拡大し企業の財務面での制約を緩和することに寄与しうると考えられる。第5章 要旨