特別引出権 (SDR)

2021年5月7日

特別引出権(SDR)は、加盟国の準備資産を補完する手段として、IMFが1969年に創設した国際準備資産です。これまでに2,042億SDR(2,930億ドル相当)が加盟国に配分されていますが、この額には世界金融危機後の2009年に配分された1,826億SDRが含まれます。SDRの価値は、5つの通貨(米ドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンド)で構成されたバスケットに基づいて決められます。

SDRの役割

SDRは1969年に、ブレトンウッズ体制における固定為替相場制の枠組みの中で補完的な国際準備資産としてIMFによって創設されました。ブレトンウッズ体制は1973年に崩壊し、主要通貨が変動相場制に移行することで、国際準備資産としてのSDRへの依存度は低下しました。しかし、世界金融危機時にその力が発揮されたように、SDR配分は流動性を供給し、加盟国の外貨準備高を補完する上で一役を担えます。

IMFなど一部の国際機関では、SDRが会計単位として使われています。

SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもありません。むしろ、SDRはIMF加盟国の自由利用可能通貨を潜在的に請求する権利です。SDRは自由利用可能通貨と交換することができます。

通貨バスケットがSDRの価値を決める

SDRの価値

米ドルでのSDRの価値は、ロンドン時間で正午に見られる直物為替相場に基づいて、日毎に決定され、IMFホームページに掲載されます。

SDRの価値は当初、純金0.888671グラムに相当すると決められていましたが、これは当時の1米ドルと等価値でした。ブレトンウッズ体制の崩壊に伴い、SDRは通貨バスケットとして再定義されました。

ある通貨がSDRバスケットの構成通貨として採用されるためには、「輸出基準」と「自由利用可能基準」という2種類の条件を満たす必要があります。通貨は、IMF加盟国か、IMF加盟国を含む通貨同盟が発行しており、発行する国または通貨同盟の輸出額が世界で5本の指に入る時にこの輸出基準を満たします。ある通貨がIMFによって「自由利用可能」だと見なされるためには、国際取引の支払いで広く使われており、主要な為替市場で広く売買されている必要があります。こうした自由利用可能通貨はIMFによる財務取引で利用できます。

SDRを構成する通貨バスケットは、世界の貿易制度と金融制度における通貨の相対的な重要性を反映するために、5年ごとに見直しが行われます。もし妥当だと判断される場合には、この見直しは5年を待たずに実施されます。見直しの対象には、SDRの価値を決める方法の主な要素が含まれます。例えば、SDRバスケット通貨を選ぶ上で使われる基準と指標、SDRバスケットを構成する各通貨の(単位数)を決めるために使われる当初の通貨の構成比などです。これら通貨の量は5年間のSDR価値評価期間を通じて固定されますが、バスケット構成通貨間の為替相場が変動するのに応じて、各通貨の実際の構成比は変動します。SDRの価値は市場為替レートに基づいて、日毎に決定されます。また、見直しはSDR金利バスケットを構成する金融商品の適切さを評価する機会としても使われています(以下参照)。

   通貨 2015年の見直しで決定された比重 2016年10月1日からの5年間における通貨単位数の固定値
  米ドル 41.73 0.58252
  ユーロ 30.93 0.38671
  中国人民元 10.92 1.0174
  日本円 8.33 11.900
  英ポンド 8.09 0.085946

2015年11月に終了した前回の見直しでは、中国人民元がSDRバスケット入りの条件を満たしたとの決定がIMF理事会によって下されました。この決定後、米ドル、ユーロ、日本円、英国ポンドに加えて、2016年10月1日から実際に中国人民元がSDRバスケットを構成することになり、中国国債の3か月物のベンチマーク利回りがSDR金利バスケットに組み入れられることになりました。この2015年の見直しにおいては、各通貨のSDR構成比を決定するために、通貨を発行する国または通貨同盟の輸出額と金融のコンポジット指数のそれぞれに同等の比重を置く新しい計算式も採用されました。

SDR金利

SDR金利の値

SDR金利は、SDRバスケット構成通貨のマネーマーケットにおける短期国債の代表金利の加重平均に基づいて毎週見直されますが、下限を0.05%とします。SDR金利はIMFホームページに掲載されています。

SDR金利はIMFから非譲許的な融資を受けた加盟国が課される金利と、IMFに対して債権を持つ加盟国が受け取る金利を計算する際の土台となります。また、保有するSDRに対して加盟国が受け取る利息、またSDR配分の際に課される利子にもなります

SDR配分

国際通貨基金協定によって、SDR会計に参加する国(現時点ではIMFの全加盟国)にIMFがSDR配分を行える時の条件が定められています。特に、SDR一般配分は、既存の準備資産を補うという世界的な必要性を満たす目的との整合性を保ち、IMF加盟国から広く支持をとりつけるべきで、SDR会計に参加する加盟国の総議決権の85%を超える大多数による総務会の承認が必要となります。合意が得られた場合には、SDRはIMF加盟国の間で各国のクォータ(出資割当額)の比率に従って配分されます。

2009年に行われた一度限りの特別配分によって、IMFに1981年以降(つまり、それまでに行われた配分より後)に加盟した国々が公正なかたちでSDR制度に参加することが可能になりました。

SDRの操作

参加している加盟国と規定に基づいて定められた保有者は、自由参加の市場でSDRを売買できます。また、必要な場合には、IMFは他の加盟国からSDRを購入するよう加盟国を指名できます。

国際通貨基金協定、また、総務会と理事会が下した決定に沿うかたちで、IMF加盟国とIMFはSDRを利用することができます。IMFはSDRのその他の保有者、非加盟国、SDR会計に参加していない加盟国、加盟国1か国以上に対して中央銀行の役割を果たす機関、その他の公的機関を規定する権限を持っています。2021年1月末時点で、15の機関が規定に基づいて定められた保有者として承認されています。規定に基づいて定められた保有者はSDR配分を受け取らないことがあります。民間の機関や個人がSDRを保有することはできません。