写真: iStock / Andrii Yalanskyi

Less than a minute(0 words) Read
借り入れ国に課す利息から債権国に支払う利子を差し引いたものを財源とする、国のための信用組合と言えよう

IMFは危機に陥っている国々に対して融資をすることで最もよく知られているかもしれない。しかし、IMF自体の財源の仕組みはどうなっているのか。重要な業務に必要な資金をどのように調達し、運用コストをどのように賄っているのだろうか。IMFは、国際金融における火消し役として機能するだけではない。重要な政策助言を提供するほか、加盟国が成長を促し、雇用を創出し、生活水準を向上させるための適切なマクロ経済条件を実現することを支援する。

このユニークな任務には、ユニークな財務構造が伴う。1兆ドル近い融資能力を持つ信用組合(各国が組合員)と考えると分かりやすい。それはどのように機能するのか。

IMFは加盟国の資金を集め、借り入れ国に利息を課し、債権国に利子を支払う。このふたつの金利の差額は、IMFの一般融資(非譲許的融資)に関連する運営費を賄う。IMFは投資でも収入を生み出しており、その収入はサーベイランス(政策監視)能力開発などその他の運営費を賄っている 。したがって、他の多くの国際機関とは異なり、加盟国に年次拠出を求めない。

国がIMFに加盟すると、世界経済における相対的な地位に大方基づく個々の クォータが割り当てられる 。このクォータによって、各加盟国のIMFへの拠出額と、借り入れ可能な額、理事会での議決権が決まる。IMFが融資可能な資金を十分に維持するため、IMFは加盟国と協力して、直近のクォータ一般見直しの下、クォータの50%増額を実施すべく取り組んでいる。

利子が付く預金

加盟国は当初、クォータの4分の1を、IMF自由利用可能通貨と称するもので預け入れる。国際取引で最も一般的に使用され、外国為替市場で広く取引されている通貨だ。今日、米ドルと英ポンド、ユーロ、日本円、中国人民元で構成されている。

加盟国クォータのこの分は、IMFの帳簿に記録され、その国の当初の リザーブ・トランシュ・ポジションを決める。加盟国はこのポジションに対して市場ベースの利率で利子を得るほか、国際収支上のニーズがある場合には、預け入れた金額の全額まで引き出すことができる。加盟国クォータの残りの4分の3は自国通貨で、多くの場合無利子の約束手形として預けられる。

IMFは、支援を必要とする加盟国に融資を提供する際、債権国として十分な経済力を持つ加盟国の通貨のみを利用する。これらの加盟国は、取引計画と呼ばれるものに含まれている。資金を必要としている国への融資を要請されたら、IMFへの拠出金を自由利用可能5通貨のいずれかに転換する(自国通貨がまだ自由利用可能通貨でない場合)。IMFはこれを基に借り入れ国に融資を提供する。 

各国が融資する額は、その国のリザーブ・トランシュ・ポジションに加算され、市場ベースの利子を生む。2024年には、約50の債権国が、非譲許的IMF融資の財源に充てる資金に対して合計約50億ドルの利子を受け取った。

一方、借り入れ国が支払う金利は、IMFが債権国に対して支払う利率にマージン(現在は毎年約0.5%ポイント)を加えたものである。この差額から生じる収入は、IMFの融資活動に関連する運営費を賄うのに役立つ。通常、残りの資金は、機関のバランスシートを支える 予防的残高を積み上げるべく、IMFの準備金に充てられる。 

Loading component...

債務不履行と延滞 

IMF融資の返済中に借り入れ国が滞納した場合はどうなるのか。IMFが支援するプログラムは、借り入れ国の経済の安定化と国際収支の改善により、借り入れ国が期日までに返済できるように設計されているため、このような事態はほとんど発生しない。プログラムにはコンディショナリティが含まれ、これは、借り入れ国がIMFと合意した政策を確実に実施することに資する。また、資金の不正使用のリスクを抑えるため、借り入れ国の中央銀行はセーフガード評価を受けなければならない。IMF融資に対し、完全に債務不履行となった国は存在しないが、特に1980年代の債務危機においては、長期にわたる延滞の事例があった(現在は存在しない)。 

借り入れ国の利払いが遅れた場合に対応するため、IMFは収入不足を補填する負担分担メカニズムを設けている。このメカニズムの下では、すべての債権国と債務国が一時的に、同額の資金を提供する。これは、債権国がリザーブ・トランシュ・ポジションに対して受け取る利子を引き下げ、債務国が融資に対して支払う利息を引き上げることによって成り立つ。これらの金額は、借り入れ国が延滞金を支払った時点で返金される。

したがって、IMF融資は債権国にとって安全な投資となる。こうした国々は、支援を必要とする国々に貸し出すクォータ資金に対して利子を得る一方で、リスクを極一部に抑えられる。

借り入れ国にもメリットがある。IMFのプログラム設計とコンディショナリティは、自国経済を強化するための国内改革を支援するものであり、ひいては、借り入れ国は手頃な融資へアクセスできるようになる。IMF融資の金利は、危機に見舞われた国々が民間資本市場で通常支払う金利よりもはるかに低い。こうした国々は民間資本市場で借り入れられない場合もある。 

より広範には、IMF融資は波及効果のリスクを軽減することで世界経済を支えている。IMFの支援がなければ、危機に見舞われた国々は輸入を大幅に削減せざるを得なくなり、輸入に依存する国内の生産者や消費者だけでなく、貿易相手国にも打撃を与えることになる。IMF融資は、ある国の危機が別の国の危機を引き起こすという波及リスクも軽減しているのだ。

譲許的融資 

IMFの融資の大半は非譲許的 融資であり、借り入れ国は市場ベースの利息を支払う。別途、IMFは、裕福な加盟国が自主的に提供した資金を活用して、最も貧しい加盟国に対し、より安価な譲許的融資を提供している。IMFはこうした資金を、IMF自身のバランスシートとは別の貧困削減・成長トラスト (PRGT)に入れている。

加盟国はPRGTに資金を拠出する際に、無償資金援助とするか融資とするかを決定する。借り入れ国は受け取った譲許的融資に対してほとんど、あるいは全く利息を支払わないため、借り入れ国が支払う金額と債権国が受け取る金額の差額は、加盟国の自発的な拠出金とIMFの資金で賄う補助金勘定で補填している。IMF加盟国は最近、非譲許的融資から得た利子の一部をPRGT利子補給金に充当することが可能となる枠組みを作成することを決めた。 

1944年にIMFの創設が決まったブレトン・ウッズ会議で、米国のヘンリー・モーゲンソウ財務長官は、国際通貨金融協定の詳細は「不可解」に見えるかもしれないと述べた。とはいえ、IMFは根本的には、借り入れ国に課す利息から債権国に支払う利子を差し引いたものを財源とする単純な信用組合であり、債務国と債権国双方に、また、世界経済全体に、利益をもたらしている。

アンナ・ポステルニャックはIMF戦略政策審査局の上席調査官。

記事やその他書物の見解は著者のものであり、必ずしもIMFの方針を反映しているとは限りません。