変化の時代における機会
IMF News, October 8, 2025
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- Published: October 8, 2025
概要
- 発言者: クリスタリナ・ゲオルギエバ(IMF専務理事)
- 種別: スピーチ
- 日付: 2025年10月8日
- 主題: 世界的な変化と不確実性の中での機会、世界経済の現状評価、政策優先事項と地域別提言
世界経済の現状とレジリエンス
- 要旨: 世界経済は「思っていたよりも良いが、必要とするよりも悪い」状況。IMFの「世界経済見通し」では今年と来年に若干減速すると想定。
- レジリエンスを支える4つの要因:
- 政策のファンダメンタルズの改善。
- 民間部門の適応力。
- 関税の影響が当初懸念されたほど深刻でないこと。
- 緩和的な金融環境(この状態が維持される限り)。
- 金融・貿易に関する懸念:
- 世界的な不確実性は上昇し続けており、新たな「常態」となり得る。
- 貨幣用金の保有は世界の公的準備資産の5分の1を上回っている(地政学的要因と評価効果を反映)。
- 関税の第二ラウンドや価格転嫁を通じたインフレ上昇、金融政策と成長への影響のリスクが存在。
- 緩和的な金融環境は雇用創出の一部軟化を覆い隠している可能性があり、急激な調整が起これば発展途上国に特に厳しく作用する恐れがある。
- 関税に関する具体的数値:
- 米国の加重平均関税率は4月の23%から現在では17.5%に低下しているが、以前の水準を大きく上回っている。
- 金融市場の状況:
- AIに関する楽観で世界的に株価が高騰、タイトなリスクスプレッドとあいまって資金調達市場は概して非常にオープン。
- 年初からのドル安はドル建て債務を抱える米国外の借り手に息抜きを提供。
レジリエンスの限界と試練
- 世界のレジリエンスはまだ十分に試されていないと強調。
- 観察されるリスク:
- 関税の影響の全体像は未だ不明。
- 金融環境の急変によるバリュエーション調整は過去の大きなリスク事例に類似(25年前のインターネット関連の強気相場と近い水準)。
IMFが提示する3つの中期的政策目標
- 第一: 持続的に成長を押し上げ、より多くの雇用、より多くの歳入を生み出し、公的・民間債務の持続可能性を高めること。
- 第二: 各国政府の財政を立て直して、民間部門の借入金利を上昇させることなく新たなショックを緩和し、緊急のニーズに応えられるようにすること。
- 第三: 国内外の過度な不均衡に対処して、それが妨害要因にならないようにすること。
成長に関する分析と提言
- 中期的成長見通し:
- 世界経済の成長率は、中期的に、パンデミック前の3.7%から約3%へと低下すると予測。
- 生産性向上に必要な政策要素:
- 財産権、法の支配、良質なデータ、実効性のある倒産法制、強力な金融セクター監督、独立かつ説明責任を果たす制度。
- 規制改革の呼びかけ:
- すべての加盟国に対し、強力な制度とガバナンスを支えに起業のエネルギーを解き放つべく、規制の掃除に取り組むよう要請。
- 地域別の重点提言:
- アジア: 域内貿易の深化、サービス部門と金融へのアクセス強化、非関税障壁の引下げにより長期的にGDPを1.8%押し上げる可能性。
- サブサハラアフリカ: 若く増加する労働力を踏まえ、ビジネスに優しい包括的改革とアフリカ大陸自由貿易圏の進展により、アフリカの中央値の国の1人当たり実質GDPは10%以上押し上げられる可能性。
- 欧州: 単一市場の責任者に真の権限を付与し、労働市場や財・サービスの貿易、エネルギー、金融における国境摩擦を取り除き、単一の欧州金融システムとエネルギー同盟を構築すること。米国の民間部門の活力に追いつくための行動を要求。
財政の課題と勧告
- 世界の公的債務は2029年までに対GDP比100%を超えるとの指摘。
- 債務増加の影響: 利払い費の膨張、借入コスト上昇、その他支出の制約、ショック緩和能力の低下。
- 低所得国向け:
- 受け取る側の低所得国は自助努力の拡大が必要で、税収の対GDP比を最低でも15%にすることが目標。
- 財政健全化の実行可能性:
- 社会不安が障害となるが、計画、コミュニケーション、うまい実施により大幅な赤字削減は実現可能。中期的成長の加速が助けになる。
- 米国向け勧告:
- 連邦赤字の対GDP比が戦後の最高値を上回るリスクを踏まえ、持続的な対応が必要(裁量的支出にとどまらない)。
- 家計貯蓄を奨励する施策(既存の退職貯蓄向け税優遇拡充など)を検討。
- 中国向け勧告:
- 過渡的な財政拡張と恒久的な財政の再編成を呼びかけ、民間消費を刺激し新たな成長モデルへの移行を促す財政・構造パッケージを提案。
- パッケージには社会的セーフティネットや不動産部門の整理への支出拡大を含め、産業政策への支出は大幅に削減すべき。IMFの新しいペーパーではそのコストが毎年対GDP比4.4%に上ると試算される。
- ドイツ向け示唆:
- より拡張的な財政政策への構造変化は目下の経常収支黒字の削減に寄与するはずであり、インフラへの公共支出は国内の民間投資に対するインセンティブを改善するとして有益。
経常収支不均衡と対応
- 再燃する経常収支不均衡は保護主義的反動や金融安定性リスクを助長する可能性。
- IMFの取り組み: 対外セクター評価の改良を進め、主要プレーヤーに政策是正を求め続ける。
- 米国の状況:
- 民間消費と財政赤字がともに大きく、経常収支赤字が2000年代初頭以来の水準に達している。
- 対応は連邦赤字への持続的対応と家計貯蓄奨励の2本柱を想定。
若者と機会
- 若者を中心に広がる期待に応えることが政策当局者の責務であると強調。
- 正しい政策とは、賢明な規制、強力な制度、信頼性のあるデータ、強固なセーフティネットによって自由市場を支えるものであり、レジリエンスの向上とさらなる成長を実現する力を持つ。
出典: クリスタリナ・ゲオルギエバ「変化の時代における機会」スピーチ(2025年10月8日、IMFコミュニケーション局)