IMF世界経済見通し

世界経済見通し (WEO) 2019年10月

2019年10月

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総括

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世界経済は各国で成長の同時減速を続けており、2019 年の成長率は再び下方修正され、世界金融危機以降で最も低い 3.0%と予測されている。各国の景気拡大が同時進行した2017 年の 3.8%と比べると、これは深刻な落ち込みと言える。この景気低迷は、高まる貿易障壁、貿易や地政学的な情勢をめぐる不透明感の増大がもたらした帰結である。また、複数の新興市場国において、各国特有の要因を受けたマクロ経済面の制約があること、また、先進国で高齢化や生産性の伸び悩みといった構造要因があることも、今のさえない経済成長につながっている。

2020 年における世界経済の成長率は 3.4%へとやや改善する見込みだが、4 月の見通しからは 0.2%の下方修正となる。しかし、現在の同時減速とは異なり、2020 年の成長回復は裾野が狭く、心もとない。先進国の成長率は 2019 年と 2020 年ともに 1.7%に低下する一方、新興市場国や発展途上国の成長率は 2019 年の 3.9%から 2020 年の 4.6%に上向く見通しである。この回復の約半分は、トルコやアルゼンチン、イランなど、ストレスを抱えている新興市場国で景気が回復するか、あるいは他の地域よりも景気後退が軽微であることで説明できる。残りの部分は、2018 年に比べて 2019 年の成長率が大幅に低下した、ブラジルやメキシコ、インド、ロシア、サウジアラビアといった国々の回復を反映している。

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要旨

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世界の経済活動は、2018 年の第 2 四半期から第 4 四半期にかけて急減速した後、不振が続いている。特に製造活動の勢いは、世界金融危機以降見られなかった水準にまで大幅に落ち込んだ。深刻化する貿易摩擦や地政学的緊張の高まりによって世界貿易制度の将来、より広くは国際協調の将来に関する不透明感が増し、景況感や投資の決定、世界貿易に打撃を与えている。金融緩和政策強化へと舵が切られたことが政策措置と情報発信の両面から見て明らかとなっており、上記のような緊張状態が金融市場の景況感や活動に与える影響は和らいできた。同時に、概して打たれ強いサービス部門が雇用の伸びを下支えしている。そうは言っても、見通しは今もって心もとない。

2019 年の世界の経済成長率は 3.0%になると見込まれ、これは 2008-2009 年以降では最低水準で、2019 年 4 月の「世界経済見通し」から 0.3%ポイントの引き下げとなる。成長率は2020 年には 3.4%まで回復する(4 月時点の見通しに比べ 0.2%ポイントの下方修正)と予測されるが、これは主に、マクロ経済的ストレス下にある中南米の新興市場国、中東、また、欧州の新興市場国や発展途上国の国々で、景気動向の改善が予測されることを反映したものである。しかし、これらの国々の複数について前途が不透明である点や、中国と米国の成長鈍化が予測されること、下振れリスクが目立つことなどを鑑みると、世界の経済活動のペ ースが予想よりずっと精彩を欠く結果に終わることも十分ありえる。こうした結果を阻止するために政策では、貿易摩擦を解消し、多国間協力を再び活発にし、必要とあらばタイミング良く経済活動支援を実施することを断固として目指していかなければならない。強靭性を高めるために政策当局者は、中期的に成長にリスクをもたらす金融上の脆弱性に対処すべきだ。誰にとってもより良い経済展望を確実なものにするためには、成長をより包摂的なものとすることが不可欠であり、これは引き続き、全体的な目標として据えられて然るべきである。

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第2章の要約 縮小か、さらなる拡大か? 先進国内における地域間格差と調整

先進国ではここ数年、社会的・政治的な緊張が増す中で、実質生産や雇用、生産性に関する、国の下のレベル、つまり、国内における地域間格差への注目が高まっている。先進国の平均をとると、1980年代後半以降、特定地域での経済的集中と、それ以外の地域での相対的な停滞を反映して、地域間格差が拡大してきた。平均的に言えば、遅れている地域は、国内の他地域と比べて健康状態が悪く、労働生産性が低く、農業や工業部門における雇用比率が高い。しかも、遅れている地域ほど調整は遅く、負のショックが経済的なパフォーマンスに及ぼす悪影響も長期化する。貿易面のショック、とりわけ国外市場における輸入競争の激化は、多くの議論がなされているものの、平均的に見れば、遅れている地域とそれ以外の地域との間における、労働市場のパフォーマンス格差にはつながっていない模様である。対照的に、テクノロジー面でのショック(機械装置の資本財コストの低下で間接的に測定される)が、自動化に対して脆弱性の高い地域の失業率を押し上げている。遅れている地域の中でも、自動化の影響を受けやすい場所ほど打撃も大きい。歪みを軽減し、市場をより柔軟で開かれたものにし、しかも強固なセーフティーネットを提供する政策を国レベルで行えば、負のショックに対する地域の調整も容易となり、失業率上昇を抑えられる。遅れている地域に対象を限定した地域ベースの政策も効果があるかもしれないが、メリットある調整を阻害するのではなくむしろ支援するように、きめの細かい対応が求められる。

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第3章の要約 低所得国と新興市場国の成長を再び 構造改革の役割は何か?

新興市場国や発展途上国における構造改革は、1990年代に速いペースで進んだものの、2000年代初め以降になると減速している。本章では、構造改革に関する、新たに構築されたデータベースを用いることにより、ガバナンスや国内金融・国際金融、貿易、労働市場・製品市場といった分野での改革を推進することにより、大幅なGDP拡大が中期的に可能になりうることを明らかにする。大規模で包括的な改革パッケージであれば、年間GDP成長率を当分の間約1%ポイント引き上げ、平均的な新興市場国や発展途上国の生活水準が先進国レベルに収斂する速度を倍にすることができる。それと同時に、改革の遂行に数年かかり、経済が不調な時期に実施すると短期的に代償が大きくなりかねない改革(雇用保護規制の緩和や国内金融の自由化)もある。こうした改革は、良好な経済環境の下で、しかも当局による選挙公約の下で早期に実施するのが最適である。さらに、ガバナンスや信用へのアクセス(このふたつは成長の制約要因でもある)が強力であるほど、また、労働市場のインフォーマルな度合いが高い場所であるほど(改革がインフォーマル度の軽減に貢献するので)、改革はその効果を上げることができる。こうした知見は、改革の恩恵を最大化するために、その国の事情に応じて改革を慎重に調整する必要性を浮き彫りにしている。