世界経済の安定性を促進するためのIMFの取り組み

2018年3月31日

安定性を促進し、危機に対する脆弱性を軽減し、持続的な経済成長と生活水準の向上を促す経済政策や金融政策について、IMFは加盟国に助言を行っています。また、国際通貨制度や国際金融システムの健全性に影響を与える世界経済のトレンドや動向についても、モニタリングを行うとともに、各国の政策が国境を越えて域内諸国や世界全体に及ぼす影響について加盟国間の対話を促しています。こうした「サーベイランス」と呼ばれる活動に加えて、IMFは加盟国の諸機関が能力を強化できるように技術支援を提供しているほか、国際収支上の危機に直面した加盟国が円滑に調整を進められるように資金の準備を行っています。

世界経済の安定性が重要である理由

経済の安定性を促進することは、部分的には経済危機や金融危機を回避し、経済活動の激しい変動や高インフレ、外国為替や金融市場の過剰なボラティリティを避けることです。経済が不安定だと不確実性が増し、投資が抑制され、経済成長が阻害されて、生活水準が損なわれます。活力あふれる経済には一定程度のボラティリティと構造のゆるやかな変化がつきものです。政策担当者にとっての課題は、国内外の不安定性を最小限にとどめることで、これは生産性の向上、雇用や持続的な成長によって、生活水準を引き上げる経済の力を抑制することなく進める必要があります。

経済と金融の安定性は、一国のみならず多国間レベルの問題でもあります。最近の金融危機が示すように、各国・地域の相互連関性が一段と高まっています。脆弱性は、業界の境界線や国境を越えてより簡単に拡大する可能性があります。

IMF が行う支援

IMFの主な機能にはサーベイランス(政策監視)、技術支援、融資がありますが、これらを通じてIMFは加盟国が健全で適切な政策を実施できるように支援しています。

サーベイランス:

IMFに加盟している国々は、国際社会による自国の経済政策と金融政策の審査を受ける義務について同意しています。国際通貨制度を監視し、加盟国189か国における経済や金融の動向と政策をモニタリングすることがIMFの責務であり、その権限を有しています。このプロセスは「サーベイランス」として知られ、各国や各地域、そして世界全体を対象に行われています。IMFは、ある国の国内政策が国の安定性を促進するものであるのかに関して、政策が国内や国際収支の安定性にもたらしうるリスクを検討することで評価を行い、政策面で必要な調整について助言します。また、ある国の政策が国内の安定性を促進するものの、世界の安定性に悪影響を与える場合には代案の提案を行います。

A. 加盟国との協議国別サーベイランス

IMFは加盟国経済のモニタリングを加盟国それぞれとの定期的な協議を通じて行っていますが、この協議は通常、年に1度の頻度で行われています。こうした協議の間、IMF職員は加盟国政府と経済や金融の動向と政策について議論するほか、多くの場合、民間部門や労働組合、学界、市民社会の代表者とも意見交換を行います。IMF職員はリスクや脆弱性の評価を行い、財政政策、金融政策、為替政策が加盟国の国内や国際収支の安定性にどのような影響をもたらすかを検討します。また、世界の安定性に対する影響も評価します。IMFは加盟国全体から得た経験を活かし、加盟国それぞれのマクロ経済面、金融面、国際収支面での安定性を促進する政策を助言しています。

このような協議の枠組みは、国際通貨基金協定の第4 条と「 統合されたサーベイランス決定 」に定められています。また、加盟国全体を対象とした次のような取り組みの内容が協議に反映されます。

B. 世界的な情勢をモニタリングする多国間サーベイランス

IMFは世界の動向や国際的なトレンドも注意深く監視しています。

IMFは「 世界経済見通し( WEO 」や各地域の「地域経済見通し(REO)」、「 財政モニター 」「 国際金融安定性報告書( GFSR 」「 対外セクター報告書 ESR 」といった定期刊行物を発表していますが、これらは 世界や各地域のマクロ経済や金融面での動向を分析するものです。IMFには世界ほとんどの国々が加盟しているため、様々な加盟国に共通の課題に関する多国間の議論を促進する上でIMFは適任であり、他にはない場所を提供することができます。また、安定性の促進に必要な政策に関する理解の共有を進める上でも同様です。こうしたなかで、IMFはG20 の先進国や新興市場国と協力して、これらの国々の政策枠組みが世界経済のバランスの良い持続的な成長と合致しているかの評価を行っています。

世界危機を踏まえて、IMFはサーベイランスにおいて自らが果たすべき役割を見直しました。これまでにいくつもの 改革 を行い、加盟国内の、また国境を越えた金融業界に対するサーベイランスの改善に努めてきました。また、マクロ経済と金融の相互関係性をより深く理解できるようにも、こうした一連の分野に関する議論を促進できるようにも、努力してきました。加えて、IMFは加盟国の持続的で包摂的な成長を促進するために、マクロ経済に非常に大きな影響を与える改革やジェンダー、格差の問題についても分析を強化してきました。

データ

金融危機を踏まえ、IMFは加盟国や金融安定理事会をはじめとする他の組織と協力し、世界の安定性に重要なデータのギャップの解決に努めています。

技術支援

IMFは、健全な経済政策を策定し実施する能力を強化できるように加盟国を支援しています。財政政策、金融政策、為替相場政策、金融システムの規制と監督、統計や法的枠組みなど、IMFの主な専門分野において助言や研修を提供しています。

融資

最善の経済政策をもってしても、不安定性や危機を完全に根絶・回避することは不可能です。加盟国が国際収支上の危機に陥った場合、IMFは金融支援を行い、マクロ経済面の根本的な問題を解決し、国内経済と世界経済に生じる混乱を抑制するとともに、センチメントや安定性、成長の回復に貢献する政策プログラムを支援することができます。また、IMFは経済のファンダメンタルズが健全な国に対し、危機予防の観点から予防的信用枠も提供しています。