新型コロナウイルス融資支援利用における透明性と説明責任の促進に向けたIMFの取り組み

2020年5月8日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は悲劇的な人命喪失を引き起こしており、稲妻のようなスピードで社会的・経済的な秩序に混乱をもたらしている。これほどの規模の混乱は、私たちがかつて経験したことのないものである。IMFは、加盟国と緊密に協力して、緊急融資に関する加盟国のニーズに応えるべく取り組んでいる。その一方で、腐敗や、緊急に必要とされる資金支援の不正使用対策も引き続き行っている。現在のような危機の下では、命と生活を守るために資金が確実に用いられるようにすることがこれまで以上に重要である。

各国のガバナンス向上と腐敗対策に対する IMF の支援

国際通貨基金(IMF)は2018年に、「 ガバナンスに係る取り組みの強化に関する枠組み 」を採択した。それ以降IMFは、こうした問題によって効率的な経済の機能が損なわれ、市民の利益が脅かされる可能性がある場合に、加盟国と一層掘り下げた、より率直な議論を行ってきた。こうした議論は、以下に挙げるいくつかの機会を通じて行われている。

  • 4 条サーベイランス

    IMFの国別担当チームは、ガバナンスや腐敗に関する問題の分析を行い、 良い統治(グッドガバナンス) を強化し、腐敗に対する脆弱性に対処するための具体的な提言を行っている。これには、国際的な腐敗の防止に関するものも含まれる [1] 。これまでに、30以上の職員の報告書において、詳細な付属文書やバックグラウンドペーパーでこれらのテーマを扱ってきた [2]

  • 融資プログラム

    こうした脆弱性が加盟国の融資プログラムの目的を達成する上で重大である場合には、ガバナンス関連のコンディショナリティが付される [3]

  • ガバナンス診断

    IMF職員は、幅広い分野におけるガバナンス強化に向けた具体的な改革の特定に役立てるために、詳細な診断調査を開始した。これまでに、10件の報告書が完了または作成中である [4]

  • 能力開発

    IMFは、財政ガバナンスや金融セクター監督、中央銀行ガバナンス、資金洗浄対策、腐敗防止枠組みの分野で、広範にわたる技術支援と研修を提供している。

  • 調査およびアウトリーチ

    IMFは、ガバナンス問題に関する分析・調査業務について幅広いアジェンダを有しているほか [5] 、他の国際機関や学界、市民社会組織とこのテーマに関する協力を促進するために広範なアウトリーチ活動を行っている。

新型コロナウイルス関連の緊急融資に関する透明性と説明責任の強化に向けた IMF の取り組み

新型コロナウイルスの世界的流行に際し、IMFは加盟国におけるガバナンスや腐敗に関する脆弱性に対処する強い意思を保持している。IMFは、なるべく資金支援を困窮している人々に届けられるように、新型コロナウイルス関連の資金調達を即時に行うニーズと、適切な説明責任・透明性との間でバランスをとるべく取り組んでいる。IMFの緊急融資は、一括前払いの形で実行される。そのため、従来どおりの条件を付す余地が非常に限られる中、IMFは透明性と説明責任を促進し、資金が所期の目的に沿って使用されるよう、以下の措置に取り組んでいる。

  1. 加盟国当局に対して、緊急支援を現在の危機の解決という非常に喫緊の目的のみに用い、他の目的に流用しないことを趣意書(レター・オブ・インテント)中で約束することを求める。趣意書は加盟国によって公表され、IMFのウェブサイト上でも閲覧できるようにする。

  2. 緊急に必要とされる融資の実行を不当に遅らせることなく、公共財政管理や腐敗防止、資金洗浄対策に関してどのような措置の導入を加盟国に対して求められるか評価する。例えば、IMFは緊急支援を要請する加盟国に対して、(1)危機関連支出に関する報告の強化、(2)危機関連支出に関する第三者による事後監査の実施と公表、(3)調達契約の公表などによる調達の透明性の確保、(4)調達契約受注企業の実質的所有者の公表による利益相反や腐敗の防止のいずれか、または複数を約束するよう求めている。具体的な例としては、以下のようなものがある。

  • ガボン 当局は、(1)緊急資金の支出に関する四半期ごとの報告、(2)当該支出に関し、支払いから6か月以内の独立監査の委託と結果の公表、(3)関連調達契約および当該契約受注企業の実質的所有者情報の公表を約束している。

  • モルドバ 当局は(1)危機関連公共調達および政府と契約する企業の実質的所有者に関する情報の公表、(2)資金洗浄対策枠組みおよび資産申告枠組みの執行継続、(3)すべての危機緩和支出を対象とする会計検査院による特別監査の義務付けと報告書の公表を約束している。

  • ナイジェリア 当局は、次のことを約束している。(1)腐敗防止および資産申告枠組みにおける連邦会計検査院の役割の強化、(2)資金洗浄・テロ資金供与対策(AML/CFT)の監督におけるリスクベース・アプローチの完全実施ならびに法人の実質的所有者に関する透明性の確保、(3)緊急対応支出の追跡・報告を円滑化し、資金供与や支出負担に関して透明性ポータル(http://opentreasury.gov.ng/)上で毎月報告を行うための特別予算の計上、(4)すべての緊急対応活動に関し、公共調達局ウェブサイト上における公共調達計画や調達公告(受注企業と実質的所有者の名称を含む)の公表、(5)緊急対応支出および関連調達プロセスに関し、会計年度終了後3~6か月以内の独立監査報告書の公表(独立監査は連邦会計検査院が実施)。

これらの措置は一般的に、透明性と説明責任を強化するためのグッドプラクティス(良い慣行)として奨励されているものである。同様の約束は、 アフガニスタン ボリビア ドミニカ共和国 キルギス共和国 モーリタニア パキスタン サントメ・プリンシペ をはじめとする多くの国でもなされている。

  1. 緊急資金がIMFの「 セーフガード評価 」の対象となるようにする。IMFはこの評価を通じて、ガバナンスや報告、統制に関する中央銀行の枠組みがIMF融資を含む資金の管理を行う上で適切であるという合理的な保証を得ることができる。不十分な点が見られる場合には、IMF職員が期限付きの勧告を行い、その実施状況を注意深く監視する。緊急融資は前払いの形で実行されることから、セーフガード評価は融資実行後に実施されることになる。ただし本評価は、より従来型・複数年の融資取極の下で当該加盟国に対して次に行われる融資の承認前に実施する。

  2. これらのプログラムにおけるガバナンス・腐敗防止措置を、現在実施されている2018年の「強化されたガバナンス枠組み」の一環として継続する。現在緊急支援の対象となっている国の多くは、すでにIMFとの間で複数年の融資取極を締結しているか、近くそのような取極を模索する予定がある。貧弱なガバナンスや腐敗の根底にある長期的な構造問題に対処する上では、緊急融資よりもこうした複数年の取極の方が適している。



[1] 国際的な腐敗の防止に関する分析は、外国公務員贈賄に係る問題( フランス ドイツ 日本 )や資金洗浄対策に係る問題( 米国 )、あるいはその両方( スイス カナダ チェコ イギリス )に関連して行われた。

[2] 4条協議で議論されるテーマとしては、財政ガバナンス( ブルガリア マレーシア など)、中央銀行のガバナンスと業務( リベリア モザンビーク など)、財政部門の監視( インド モルドバ など)、市場規制( ナイジェリア 南アフリカ など)、契約履行と財産権( ジブチ など)、資金洗浄対策問題( マルタ マレーシア など)、腐敗防止枠組み( ブルガリア メキシコ など)が挙げられる。

[3] いくつかの新しいプログラムでは、腐敗対策が中核目標の最前線に位置づけられている( アンゴラ 中央アフリカ 赤道ギニア ホンジュラス リベリア マリ コンゴ共和国 など)。

[4] これまでに、各国当局の要請に基づき、10か国でガバナンス診断ミッションが実施された(中央アフリカ、コンゴ民主共和国、 赤道ギニア モザンビーク、ホンジュラス、ギニアビサウ、 コンゴ共和国、パラグアイ、ペルー、ジンバブエ)。

[5] 分析業務の一例として、2019年4月の「財政モニター」における 腐敗の抑制 に関する章が挙げられる。この章では、腐敗の財政コストを評価し、財政分野において腐敗の機会とインセンティブの低減につながる実践や制度を模索している